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欧州エネルギー政策視察~その①:スペイン~
1.衆議院経済産業委員会の視察で訪問したスペインは、大学の卒業旅行以来27年ぶりの訪問である。首都マドリッドには、高層ビルも建ち、大きく変わった。何しろ27年ぶりだから当然である。しかし、あちこちに開発途中の空き地も多く見られ、リーマンショックをはさんでの、「住宅バブルとその崩壊」を垣間見ることができる(写真①)。
2.マドリッドの空港到着後、直ちに郊外にあるメガソーラーの視察に行く。車で走ること約2時間、ラ・マンチャ州の「ドゥルシネア・ソーラー・エネルギー・プラント」である。約86haに約15万枚の(ソーラー)モジュールが敷きつめられ、約32MW( 3.2万kW)の設備である(、③)。その大きさに圧倒される。私の地元・淡路市のメガソーラー1000kWと比べても30 倍以上、巨大なソーラーである。これを見ると、淡路島はじめ我が国には休耕田、塩田跡、企業が埋まっていない工業団地など、可能性のある用地がたくさんあることを思い浮かべる。是非、こうした遊休地を活用して太陽光発電の導入を加速し、日本経済、特に地域経済の活性化につなげたい。
3.その後、そのメガソーラーのすぐ近くにある「ビジャマジョール風力パーク」を訪問。17基のタワー(風車)が回っている(、⑤)。34MW(3.4万kW)の設備容量で、先程のメガソーラーとほぼ同規模だ。ちなみに、風力パークとメガソーラーが近くにあることには理由がある。「風の通り道」であることだ。風が吹くことによって、太陽光パネルのゴミ・ホコリが取れ、また、表面温度の上昇を抑える効果があるという。スペインらしく、周りは、ヒマワリとオリーブの畑ばかりで、日照時間も長く、風も強い絶好の自然エネルギー発電の場所だ(、⑦)。
4.スペインでは、エルナンデス・エネルギー長官()、電力産業協会(、⑩)との意見交換を行い、スペインの再生可能エネルギー買取制度について理解を深めた。その主なポイントは、次の通りである。
①スペインでの導入設備量は、2004年から2010年にかけて、太陽光24万kW382万kW、風力853万kW→1959万kWとなっており(ちなみに、風力発電のみで九州電力の総発電能力の1.5倍)、その両方でスペインの総発電能力の約30%を占めるに至っている。しかし、太陽光、風力は天候による変動が大きく、例えば、2009年12月31日には、電力需要が最低となり、電力供給の約74%が風力発電等の再生可能エネルギーにより供給される、といった事態も起きている。欧州は各国間で送電網がつながり、電力の過不足が生じた際には、お互いに融資し合うが、さらに、ドイツやスペインではその変動を火力が補うという(将来的には蓄電池を活用)。
②当初、スペインでは、太陽光発電の買取価格を高く設定しすぎたために、一種の“バブル”状態となり、太陽光の導入が一気に増えた。このため、電気料金に転嫁しきれず電力余在の未回収分が約5000億円にも達した。そこで、スペイン政府は、20年間固定価格買取を約束したその価格を途中で引き下げる(「レトロ・アクティブ」と呼ばれる)荒わざに出た。これにより、政府不信が高まり、その後の投資意欲は減退してしまったのである。
③また、スペインでは、太陽光発電の80%以上が中国製となり、スペインの国内メーカーは世界の20位内にも入らなくなってしまった。このため、何らかの品質基準を設定することも検討している。
④そして現在では、太陽光については、設備導入量の上限も定め、四半期毎に買取価格を見直すこととしている。さらに、買取の日照時間の上限も決めている。ちなみに、太陽光の買取価格は2008年に0.45→0.28ユーロkWh、2010年に0.28→0.14ユーロ/kWh(約16円)に引き下げている。他方、風力は、0.07~0.08ユーロ(約9円)/kWhで買い取っている。そして2013年以降は、風力については、もはやこのような支援制度は不要になると考えている。
⑤今後は、“ガメサ”という風力タービンメーカー、“セネール”というタワー型の「太陽熱発電」機器メーカーがある、風力発電と太陽熱発電を重視している。国内産業の育成の視点が入っているのである。ちなみに太陽熱は28ユーロ/kWhで、25年間買取ることとなっている。
⑥日本企業も、三菱商事がアクシオーナ社と組んで太陽熱発電(50MW×4ヶ所)を計画し、三井物産も、FCC社と組んで、太陽熱発電を2012年にスタートする予定である。
⑦スペインでの電気料金は2007年から1.6倍に上昇しているが、国民、産業界からの強い反発はない。
5.現在、政府から提出され、国会で審議が始まった「再生可能エネルギー買取法案」について、こうしたスペインの経験を踏まえ、自民党の責任者の一人として、必要な修正案を練り、よりよい制度となるよう全力で取り組みたい。ちなみに、自民党としては、山本一太委員長の「総合エネルギー政策特命委員会」で議論を重ねており、今週末~来週前半あたりで、党としての意見集約を図っていくことになる。私も委員長代理として、よりよい制度となるよう知恵を出したい。
2.マドリッドの空港到着後、直ちに郊外にあるメガソーラーの視察に行く。車で走ること約2時間、ラ・マンチャ州の「ドゥルシネア・ソーラー・エネルギー・プラント」である。約86haに約15万枚の(ソーラー)モジュールが敷きつめられ、約32MW( 3.2万kW)の設備である(、③)。その大きさに圧倒される。私の地元・淡路市のメガソーラー1000kWと比べても30 倍以上、巨大なソーラーである。これを見ると、淡路島はじめ我が国には休耕田、塩田跡、企業が埋まっていない工業団地など、可能性のある用地がたくさんあることを思い浮かべる。是非、こうした遊休地を活用して太陽光発電の導入を加速し、日本経済、特に地域経済の活性化につなげたい。
3.その後、そのメガソーラーのすぐ近くにある「ビジャマジョール風力パーク」を訪問。17基のタワー(風車)が回っている(、⑤)。34MW(3.4万kW)の設備容量で、先程のメガソーラーとほぼ同規模だ。ちなみに、風力パークとメガソーラーが近くにあることには理由がある。「風の通り道」であることだ。風が吹くことによって、太陽光パネルのゴミ・ホコリが取れ、また、表面温度の上昇を抑える効果があるという。スペインらしく、周りは、ヒマワリとオリーブの畑ばかりで、日照時間も長く、風も強い絶好の自然エネルギー発電の場所だ(、⑦)。
4.スペインでは、エルナンデス・エネルギー長官()、電力産業協会(、⑩)との意見交換を行い、スペインの再生可能エネルギー買取制度について理解を深めた。その主なポイントは、次の通りである。
①スペインでの導入設備量は、2004年から2010年にかけて、太陽光24万kW382万kW、風力853万kW→1959万kWとなっており(ちなみに、風力発電のみで九州電力の総発電能力の1.5倍)、その両方でスペインの総発電能力の約30%を占めるに至っている。しかし、太陽光、風力は天候による変動が大きく、例えば、2009年12月31日には、電力需要が最低となり、電力供給の約74%が風力発電等の再生可能エネルギーにより供給される、といった事態も起きている。欧州は各国間で送電網がつながり、電力の過不足が生じた際には、お互いに融資し合うが、さらに、ドイツやスペインではその変動を火力が補うという(将来的には蓄電池を活用)。
②当初、スペインでは、太陽光発電の買取価格を高く設定しすぎたために、一種の“バブル”状態となり、太陽光の導入が一気に増えた。このため、電気料金に転嫁しきれず電力余在の未回収分が約5000億円にも達した。そこで、スペイン政府は、20年間固定価格買取を約束したその価格を途中で引き下げる(「レトロ・アクティブ」と呼ばれる)荒わざに出た。これにより、政府不信が高まり、その後の投資意欲は減退してしまったのである。
③また、スペインでは、太陽光発電の80%以上が中国製となり、スペインの国内メーカーは世界の20位内にも入らなくなってしまった。このため、何らかの品質基準を設定することも検討している。
④そして現在では、太陽光については、設備導入量の上限も定め、四半期毎に買取価格を見直すこととしている。さらに、買取の日照時間の上限も決めている。ちなみに、太陽光の買取価格は2008年に0.45→0.28ユーロkWh、2010年に0.28→0.14ユーロ/kWh(約16円)に引き下げている。他方、風力は、0.07~0.08ユーロ(約9円)/kWhで買い取っている。そして2013年以降は、風力については、もはやこのような支援制度は不要になると考えている。
⑤今後は、“ガメサ”という風力タービンメーカー、“セネール”というタワー型の「太陽熱発電」機器メーカーがある、風力発電と太陽熱発電を重視している。国内産業の育成の視点が入っているのである。ちなみに太陽熱は28ユーロ/kWhで、25年間買取ることとなっている。
⑥日本企業も、三菱商事がアクシオーナ社と組んで太陽熱発電(50MW×4ヶ所)を計画し、三井物産も、FCC社と組んで、太陽熱発電を2012年にスタートする予定である。
⑦スペインでの電気料金は2007年から1.6倍に上昇しているが、国民、産業界からの強い反発はない。
5.現在、政府から提出され、国会で審議が始まった「再生可能エネルギー買取法案」について、こうしたスペインの経験を踏まえ、自民党の責任者の一人として、必要な修正案を練り、よりよい制度となるよう全力で取り組みたい。ちなみに、自民党としては、山本一太委員長の「総合エネルギー政策特命委員会」で議論を重ねており、今週末~来週前半あたりで、党としての意見集約を図っていくことになる。私も委員長代理として、よりよい制度となるよう知恵を出したい。