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ブータン、インド、バングラディシュ出張報告(その①ブータン編)
1.初めてブータンを訪問した。国民総生産(GNP)に代わるGNH(国民総幸福=HAPPINESSハピネス)を提唱し、世界から注目を集めた仏教国である。近年、この山深いの国の“スローライフ”な生活様式や、独特の様式の建物が人気で、世界から観光客を集めている。

2.今回、地元兵庫の滝川二高やJリーグチーム・ヴィッセル神戸にも関係が深い、サッカー指導者の松山博明さんが、ブータン・ナショナルチームの監督として赴任されたこともあり、バングラディシュを訪問する機会に合わせて訪問した次第である。

3.ブータンの唯一空港があるパロは、山の谷間のわずかな平野にあり、山々にブータン古来の建物が点在する、その眺望は素晴らしい(写真①)。何時間見ていても飽きない。しかも、2300mの高地、空気が澄んでいて、正に都会の喧噪を忘れさせてくれる。さすがに、世界は放っておかない。パロは今、ホテルの建設ラッシュである()。

4.日本人でもブータンに魅せられた人は多い。観光ツアー会社でブータンに惚れ込み、今はパロのホテルで働いている日本人女性がいた(右端の方)。また、神戸出身の青年はもう十数回ブータンに来ており、今は海外青年協力隊として、環境教育の指導に当たっている()。それだけ魅力たっぷりのブータンである。

5.パロから川沿いの谷間の道を約1時間走ると、首都ティンプーに着く。ブータンの人口は約70万人のうち約10万人が住む“街”である。ティンプーは、昔ながらの街並み()に、伝統衣装である「ゴ」(男性用)、「キラ」(女性用)を来たブータン人が暮らす街で()、仏教国らしく、川が架かる橋には、願いを込めて、お経を書き詰めた布を張り巡らせている()。しかし、この国に「都市化」と「グローバル化」の二つの大きな波が押し寄せているのである。

6.首都ティンプーにどんどん人が集まり、あちこちで集合住宅の建設ラッシュであった()。そのため、美しい自然の一部が変容し、また、ゴミ問題も発生している。多くの人が携帯電話を持ち、商業化が進む。役人の特権である「無税で車を買う権利」も売買されるなど、正に資本主義、商品経済が進展しているからこそ、国王は「GNH」の概念を提唱されたのではないか。
伝統文化や独特の価値観の維持と経済発展の両立、どこの国にとっても難しい課題である。

7.2006年12月に現在のワンチュク国王が前国王から王位を継承し、2008年11月に戴冠、2009年3月に初めての議会選挙が行われ民主化が始まった。今回、ペンジョール上院議長と会談を行ったが、日本の両院制の仕組み、特に、参議院の機能について関心が高く、民主化の定着に向けての努力が伺えた()。

8.経済的には、貿易の約9割を行うなどインドへの依存度が大きく、水力発電による電力もインドに売電している。そして、例えば、国営放送局BBSの新しい放送施設もインドの経済援助により建てられている。日本もこのBBSには、放送に必要な機材を提供し、元NHKの技術者を専門家として派遣するなど、ソフト面で大いに協力している()。また、橋()や送電システムなども経済協力により支援している。日本との関係もまた深いのである。

9.サッカー指導者の松山さんとは、ブータンサッカー協会の役員の方を交えて懇談し、ナショナルチームのメンバーとも話をした(:松山さんは左から二人目)。ブータンはFIFAランキング186位(ちなみに日本は32位)であるが、高地独特の心肺能力を発揮すれば、もっと上位になれるに違いない。私も、兵庫県サッカー協会副会長として、松山さんの活動をしっかりサポートしたい。

10.ブータンは入国するに際して、必ず一人ガイドをつけなければならず、今回私のガイドをしてくれたペマさんは25歳(左端)。わずか半年間の勉強でも日本語を十分に使いこなす。質問して、答えられなかったことは、次の日には返答してくれるなど、まじめで熱心である。そんなところが気に入られたのか、以前にブータンでガイドを務めた藤沢の日本人老夫婦宅に、昨年末から3ヶ月間ホームステイし、日本国内の旅行もさせてもらったそうだ。ペマさんにとっては一生の財産になったようだ。日本人の懐の深さにも感激するが、世界中でこうした日本大好きの若者が増えることが何よりうれしい。ブータンはこれまでも国際会議の場で日本の立場を支持してくれている。世界の25カ国としか国交がなく(中国とは国交なし)、国王制と天皇制という共通点もあり、大変親日的な国である。今後も両国の関係がさらに深化するよう、私も努力したいし、ペマさんの今後の活躍にも期待したい。

  • :ブータンで活動する青年協力隊の皆さん。
  • :男性の伝統衣装の「ゴ」の背中の部分が、カバン代わりになって、小物を入れてます。