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ブータン・インド・バングラデシュ出張報告(その②:インド・バングラデシュ編)
1.今回、インドは乗り換えのために、コルカタ(カルカッタ)に立ち寄っただけであるが、友人のコタリさん宅に招かれ、コルカタの経済界やジャーナリストの方々と意見交換を行った(写真①)。コタリさんは、インドと日本で飲食店を経営しておられ、お嬢さんの結婚式にも出席した間柄である(2006年2月13日活動報告参照)。コルカタは今回三度目の訪問(2005年5月26日活動報告参照)で、わずか5時間の短い滞在であり、相変わらずの喧騒には目を細めるが()、道路を走る車の多くが新しいものに変わっていることに驚き、また、ショッピングモール()や新しいオフィスビル()が数多く建設ラッシュであり、ここでもインドの成長ぶりを実感した。

2.コルカタのある西ベンガル州はもう30年以上も共産党政権であり、バッタチャルジー州首相とは面識もある(2006年5月26日ブログ参照2005年5月26日活動報告参照)が、米印原子力協定への対応を巡って、中央政権において共産党はコングレス党との連立から離脱し、その後退潮傾向にあるという。来春の選挙では、この西ベンガル州でも与党コングレス党が勝つのではないかとの予測であり、バナジー鉄道大臣が州首相候補にあがっているそうだ。次回は是非お会いしたい。

3.コルカタから、インドの新興航空会社キングフィッシャー社のプロペラ機でバングラデシュの首都ダッカへ。二度目の訪問である(2008年8月2日活動報告参照)。今回は、在任中、大変親しくして頂いたドウラ元在京大使(2009年3月17日とっておきの一枚参照2008年7月10日とっておきの一枚参照2008年6月6日ブログ参照)がいろいろアレンジしてくれた。

4.バングラデシュは三つの大きな問題を抱えている。第一に電力不足。急激な経済成長に電力関係の施設が間に合っていない。天然ガスの開発も遅れがちであり、ガスを送るパイプライン網の未整備、そして、各家庭にメーターが設置されていないことによる電力の浪費、ガスへの過度の依存(80%)による新エネルギー導入の遅れ、などなど様々な要因が重なり、首都ダッカでも毎日2~3時間の停電である。また、それに関連して、石油の供給も制限されており、ガソリンスタンドには車の大行列ができ、第二の課題である大渋滞の一つの要因ともなっている()。

5.第二に交通渋滞。これが想像を絶するほどひどい()。15~20年前、タイの首都バンコクも渋滞がひどかったが、それを上回る大渋滞である。前回訪問した2年前に比べ、車の量が圧倒的に増え、かつセダンタイプの高級車も増えた。しかし、バイパスや高速道路、地下鉄などの整備は全くなされておらず、また、ゆっくり走る「リキシャー」(人力車)や「オート・リキシャー」(三輪バイクタクシー)が渋滞の拍車をかけている(、⑧)。なお、急速な経済成長と都市化に伴うゴミの大量発生も大きな課題である(。⑩は窓から見たダッカ)。

6.第三に、賃金値上げの動きである。あちこちでデモも起こっている。バングラデシュは勤勉な国民性で、かつ1億6千万人の人口があり、労働力が豊富である。しかも、人件費は、例えば繊維業界のワーカーで月約5,000円。同じ繊維業界で比べてみても、ベトナムで1万円強、インドでは北部1万円強、南部7~8千円と圧倒的に安い。このため、賃金値下げの運動が起きているのであるが、2008年にユニクロが中国から一部工場をバングラデシュに移し、このことがきっかけとなり、日本から繊維関係の企業進出の一種のブームが起きている。ユニクロにヒートテックの素材を提供する東レの工場も稼働しているし、他の繊維メーカーも進出し出している。この繊維関係での関係強化を通じて、バングラデシュとの関係が深まることを期待したい。特にパキスタンと混同する人や、また治安を心配する人が多いが、極めて安全な国である。長年、政治的に激しい闘争が行われてきたために、そのような印象強いのであろうが、2年前に誕生したハシナ政権により落ち着きを取り戻してきている。こうした課題の解決への道筋をつけれるのかどうかが、鍵である。

7.今回は、エネルギー・電力関係の課題を中心に、エナムル・ホック電力エネルギー大臣()、アザド同次官との意見交換、そして、民間企業の方も含めて、日本企業の進出・協力の可能性などについて意見交換を行った。

8.そして、大渋滞の中、飛行機に乗り遅れないかと、ヒヤヒヤしながら、ダッカ空港に向かい、バンコク経由で帰国へ。バンコクでは、乗換えの時間を利用して、大使館のメンバーから、タイの政治情勢などを伺った。タイでは、現政権のアピシット首相支持派(黄シャツ隊)とタクシン元首相支援派(赤シャツ隊)が激しく抗争を繰り返し、先月には白昼に街中で死傷者まで出る爆発事件も発生している。危険な段階に入った、との見方もあり、予断を許さない。タイはアジアの優等生として、一早くインフラ整備も行い経済成長を遂げたが()、今回の政治的対立は深刻である。しかし、政治が不安定な状況になっているという意味では、日本も同じである。連日、民主党内での権力闘争の様子が伝えられる。とんでもない話だ。経済の先行き、透明感が高まっている。1日も早く安定的な政権運営となるよう、与野党間で(超党派で)建設的な議論をしなければならない。