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国連・安全保障理事会で日本政府を代表してスピーチ~ライス国務長官とも対談~
1.国連の安全保障理事会でソマリアの海賊対策が議論されることとなり、担当する私が中曽根弘文外務大臣に代わって出席することとなった。12月15日夕方、急遽成田を発ち、国連本部のあるニューヨークに向かう。

2.15日夜ニューヨーク着、早速高須幸雄国連大使と安保理での決議案の調整状況などについてブリーフを受け、意見調整を行う。

3.16日朝、ホテルを出て国連本部に向かう。国連はワシントンD.C.郊外のメリーランド大学院に留学中の92年に訪れて以来16年ぶり。もちろん仕事(公務)では初めてだ。小雨(雪?)降る肌寒い中、妻・信子から贈られたマフラーを巻き、会議前の緊張した顔で一枚(写真①)。
写真登録などを済ませ、国連本部に向かう。まずは、シュタウアー・デンマーク駐在大使と意見交換。デンマークは海運国家だけあって、ソマリアの海賊対策には熱心だ。特に、海賊を捕まえて処罰するための法律的な取組みを強化することで一致。

4.続いて、安全保障理事会の部屋に。午前中は、中東和平の会議があるが、こちらには日本に呼ばれていない(ちなみに、安保理は、米、英、仏、露、中の常任理事国に、現在、非常任理事国である、ベルギー、インドネシア、クロアチア、パナマ、ブルキナファソ、ベトナム、イタリア、コスタリカ、リビア、南アフリカの10ヶ国の計15ヶ国で議論される。日本は来年1月からインドネシアに代わって2年間非常任理事国となるが、この日の午後のソマリア海賊対策の会合には、貢献が期待されるため特別に呼ばれているのである)。

5.しかし、その場で、ライス米国国務長官を見つけて、海賊対策についての日本における検討状況や、給油法の成立などを説明()。ライス長官からは給油法成立について「Excellent!」と感激され、さらに、ソマリアにおいても日本の活動への高い期待が表明された。アフガニスタンの大統領選への出馬も噂されるハリルザード・米国国連大使とも意見交換()。そして、潘基文・国連事務総長と挨拶を交わし、短い会話を交わす()。

6.続いて、今月の議長国であるクロアチアのサナデル首相主催の昼食会。この場でもライス長官と立ち話()。サナデル首相()や中国の何外交副部長()とも意見交換。ちなみに、午後の会議で、何副部長はソマリア沖に艦隊を派遣することを検討していることを表明した。
昼食は、私の席はライス長官の目の前()で、左隣のコスタリカのウルビナ元外務副大臣、右隣のノルウェーのストア外務大臣()と国際情勢について意見交換。

7.さて、いよいよ安全保障理事会である。この大舞台を経験できるのは名誉なことだ。やや緊張しながら、会場で、ミリバンド英国外務大臣を見つけ、その場で対談()。日本の検討状況などを話す。こちらも日本への期待を示された。まだ43才の英国政界のホープ。将来、首脳同志で、再びこの場で話せることを期待したい。

8.安保理では、まず最初にソマリア海賊対策に関する安保理決議1851が全会一致で採択された。米国の強いイニシアティブの結果である。その概要は以下のとおりである。
①ソマリア暫定連邦政府(TFG)との協力国が、TFGの要請に従い、海賊及び武装合同行為を抑圧する目的で、関連国際人道法等に従って、ソマリア(陸上も含む)において、今後約1年間の間、必要なあらゆる措置(ソマリアにおいて適切なもの)をとることができる。
②ソマリア沖の海賊対策のあらゆる側面に関する各国・関連組織間で、国際協力メカニズムを設置することを促進する。
③ソマリア沖の海賊活動に関する情報を調整し、効果的な法的取締りを行うため、当該地域での情報センターの設立を検討することを促進する。

9.その後、常任・非常任理事国がスピーチをし、その次のジャマ・ソマリア外相に続いて、私より、日本政府を代表して我が国の考え方を表明()、その内容は以下のとおり(は、会議後、の記者団からインタビューを受ける模様)。
①本日の決議の採択を歓迎。
②ソマリア沖・アデン湾は、欧州・中東・東アジアをつなぐシーレーンの結節点としてきわめて重要。当該地域の海賊は人類共通の敵であり、国際社会が一致して対処することが重要である。
③日本としては、新たな海賊法制の整備、あるいは、現行法制下でいかなる対応ができるかなど、関係省庁間で鋭意検討を行っており、できることから早急に実効的な対策を講じていきたい。
④ソマリア沖海賊問題に関する国際的な協力メカニズムが設置される場合には、日本はそうした枠組みに当初より加わる用意がある。
⑤我が国は、アジア海賊対策協定(ReCAAP)の策定を主導した経緯から、ソマリア沖についてはReCAAPに類似した協力の枠組みを設立するための議論において、有益な知見を提供することができる。また、周辺国の能力強化支援にも取り組んでいく考えである。

10.今回の安保理において、ソマリアの海賊対策についてさらなる対応をとることが、全会一致で決議されたことは、極めて意義深いものだと思う。世界的な経済危機の中で、船舶の航行の安全など脅かされると、ますます世界経済は縮小に向かってしまう。国際社会が一致してこの海賊対策に取り組むことが必要である。
そして、その中で、国際社会の日本に対する期待は大きい。日本にとっても、日本人の生命・財産が危険にさらされており、また、貿易立国の日本の経済にとっても死活的な課題である。国内での検討を加速させ、各国との協調の下、この海賊対策に迅速に対応したい。