BLOG

ブラジル・米国他南北アメリカ大陸出張報告(その⑤:ブラジル編(5)サンパウロNo.2)~大農場視察。ブラジルの可能性と課題と。~
1.6月22日(日)、夕方には、私が友好議員連盟の事務局長を務める、隣国のボリビアの日本人移住地サンタ・クルスを訪問することになっており、昼すぎまでの間、今日は日曜日でなかなか公務のアポイントが入りにくいため、農業大国ブラジルの農業の実態を知るべく、日本の三菱グループが経営する「東山(とうざん)農場」を訪問する。

2.サンパウロ市から約120Km離れた地で、当初3700haあった「東山農場」は、今では830haであるが、それでも日本の農家とはケタ違いの広さである(ちなみに、日本の農家の平均規模は、都府県で約1ha、北海道でも約16haである)。社長の岩崎透さんが、歴史やブラジル農業について詳しく説明してくれた。同行してくれた大使館の金沢登紀子専門調査員とともに、意見交換をさせて頂いた。岩崎さんは、三菱グループの創始者・岩崎弥太郎氏の実弟・岩崎弥之助氏の曾孫に当たられる。また、同行してくれた金沢女史は、東大農学部卒業後、農水省のキャリア官僚として歩み始めた後、ブラジルに魅せられ、官僚の道を捨てた「変わり種」である。このユニークなご経歴のお二人に加え、日本からの移民をテーマにしたブラジル映画「外人」の主演女優だった塚本恭子取締役も交えて、楽しくかつ有意義な約3時間の滞在であった。

3.830haのうちの約240haのコーヒー園は圧巻である(写真①)。140万本のコーヒー樹栽培、年間約4000トンのコーヒー生産、その広大な農園を岩崎社長にご案内頂いたが、驚くことばかりである。「(コーヒーの)赤い実を取って噛んでみてください」と促され、口にしてみると()、2粒の豆の回りの甘い果肉が口に広がる。コーヒーの実が甘いとは初めて知った。赤い実や黄色い実、背の低い木や高い木、植えたての木に3年目の収穫を迎える木、などなどすべての木について説明を加えてくれた。
また、岩崎さんは、日本の「サカタのタネ社」と協力して新種の野菜の研究をされたり、地元のカンピーナス市との協力で、様々な果実・樹木の栽培をされたり、そして、何より、このサンパウロで初めての日本からの製造業として、清酒製造業を始められたり、とベンチャー精神旺盛な経営者である。
昼食は、日系2世の「ホンマ・ヒサコ」さん作の器に盛った手作りの料理である()。これは塚本さんすべてが料理されているのであるが、食前酒は、自前の清酒をベースにサカタのタネ社が開発した甘いトマト入りのオリジナル・カクテルである。
ブラジルの農家の規模と、肥沃な大地、そして何より開拓者精神を堪能したひとときであった。

4.この東山農場で360度見渡せる高台まで行くと、様々なことに気がつく。
①約50~60Km先のペトロブラスの製油所では、ボリビアからパイプラインを通じての天然ガスを使っていること。煙突の先に火が見えます()。
②約200haの土地をサトウキビ生産者に貸していること(最近刈り取ったあととの由。ちなみに、ブラジルでは、サトウキビを5年間栽培し、一年休むその間に大豆を栽培することを計画している農業者が増えているとのことである)。
③約12Km離れたカンピーナス市の中心部()には、リオ⇔サンパウロ間に計画される新幹線を延伸し、近くにある、現在は貨物中心の「ヴィラ コッポス空港」を国際空港として拡大・充実させようとの計画があること(ちなみに、近くに、トヨタやホンダの工場もある)。
④ユーカリの木の成長が通常より早く、防風林として活用していること(ブラジルではパルプ用によく使われている)。

5.また、広大な農園内には、様々な花・木、小動物がおり、大自然の中に様々な発見がある。
①ブラジルの国の由来となった「パオ・ブラジル」の木()は、幹を製材用に、樹液を染色用に使っていたという。
②綿花の木も多少残っている()。他にも、アボガドがあったり、「とっくり椰子」(現地では「象の足」の木と呼ばれる)()。
③珍しい「土フクロウ」()や「カパビラ」も見れる。この池には、ピラニアやワニ、カワウソもいると言う。
④NHKドラマ「ハルとナツ」の舞台となっただけに、入植(移民)当時の生活がよくわかる(、⑪)。は当時の住居の屋根の瓦。この瓦は奴隷の太ももで型を取ったため、先が少し細くなっている。

6.このように、楽しい発見や驚きの連続の農場訪問であった。治安、複雑な税制、労働法制、道路・鉄道・港湾といったインフラの整備など課題の多いブラジルではあるが、豊富な石油・鉱物資源に加えて、この大自然と広大な農場という大きな大きな可能性を秘めた国なのである。16年ぶりのブラジルに魅せられた今回の訪問であった。