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ブラジル・米国他南北アメリカ大陸出張報告(その①:ブラジル編(1)首都ブラジリア)~皇太子殿下に随行、多くの日系人・ルーラ大統領と面談~
1.6月17日(火)ブラジルの首都ブラジリアに到着後、早速皇太子殿下をお囲みしての夕食会。大変緊張したが、殿下のお人柄にふれさせて頂きながら、とてもなごやかな会となった(写真①~③はその時の料理)。この間に、外務省の方からは南米事情について詳しく伺う。

2.6月18日(水)は、ちょうど100年前の今日、神戸港を出港した笠戸丸がサンパウロ州サントス港に着いた日である。781人の日本からの移民が初めてブラジルに渡った日なのである。100周年記念式典では、皇太子殿下ご臨席のもと、日系2世、3世の方々など多くの日系人、そしてルーラ大統領をはじめブラジル政府関係者が出席し、盛大に開かれた()。

3.今や150万人にも達する日系人は、ブラジル国内各地で大活躍されている。サイトウ・ジュンイチ()氏は空軍トップの司令官であり、①日本、ブラジルは、共に引き続き国連安全保障理事会常任理事国を目指すこと、②日本とブラジルの合同演習を実現すること、などを意見交換した。また中小零細企業支援公社総裁とは、①日本での研修から帰国した日系人のブラジル国内での再就職や起業への支援策について、また②ブラジルは日本方式でのデジタルテレビの導入を決めているが、貧困層向けの安価な変換機の開発について、日本とブラジルで協力することなどを話した()。さらにオノ労働最高裁判所判事とは、ブラジルに進出した日系企業からよく耳にする労働関係の難しさについてご意見を伺った。オノさんによれば、ブラジルは労働組合の力はまだ強くなく、その分労働者個人を保護するために厳しめの労働法制になっているという。いったん決められた給料は下げることができない、とも聞いていたが、労使関係がまだ成熟していないということなのだろうか?

4.いずれにしても、ブラジルの政官財の各界のトップクラスで日系人が大活躍しているのである。サイトウ空軍司令官はじめ、軍の幹部も日系人が占めており、よほどのことがない限り、日本と戦火を交えることはないだろう。ブラジルは大変な資源国・農業国であり、信頼関係の一層の深化が急務である。

5.18日夜の皇太子殿下をお招きしてルーラ大統領主催の晩さん会。そこで、いくつかの偶然が重なる。まず、私のテーブルの隣の席に座られたのは、ウエダ・マサミ連邦最高裁判事。なんと、このウエダさんのお父様が淡路島の神代(南あわじ市)のご出身でサンパウロに来られたのである。ひとしきり淡路島の話で盛り上がった。鳴門に橋がかかっていることや、大震災もご存知なく(南あわじは被害がそれほど大きくはなかったが)、もちろん、合併して3市になっていることなども全くご存知なかったが、大変懐かしそうに聞いておられた。ウエダさんご一家は法律家一家で、息子さんとお嬢さんともに弁護士、しかも共に弁護士と結婚されている。すでにお孫さんおられるから日系4世になるわけだ。
そして、さらに奇遇なことに、ウエダさんは、私が大変親しくなったイイホシ下院議員とも親戚になるという。ウエダさんのお母さん(佐賀県出身)の叔父さんがイイホシ議員のおじいさんになるという。「世界は狭い」と言って三人でお笑いをしたが、まさか地球の反対側で、淡路島のことを話すとは思いもよらなかった。心温まった瞬間である(は、ウエダ判事とルーラ大統領と)。

6.また、同じテーブルに、あの世界最大のリオドセを傘下に持つ「ヴァーレ」社のニェーリ社長がいたのである。ブラジルの国会議員が周りにたくさん集まっていたので、「あの人は誰ですか?」と聞いてみたら、彼だったのである。さすがブラジル最大企業社長、ニェーリ社長は「政治資金を求められて困っているんです」と英語で話したあと、日本語で「MAITTANAA~(参ったなあ~)」とつぶやかれ、周りは日本語のわかる日系人の集まり、皆んなで大笑いをした。ヴァーレ社にとって日本は第3のマーケット、新日鉄、JFE、神戸製鋼…とすらすらと取引先の企業名が出てくる。是非一度ゆっくり会おう、と言って再会を誓った(、右端がニェーリ氏)。
そして、与党のポスト・ルーラ大統領の最有力とも言われ、現政権の実務の取り仕切り役であるジルマ・ロウセフ大統領府文官長(官房長官)とも、原子力協力の話などで盛り上がった()。ブラジルのウラン埋蔵量はまだ未確認の鉱山が多く、推測ではかなりの埋蔵量が期待されている(現在でも世界第6位)。ロウセフ文官長からは日本の技術への大きな期待も表明された。今回は、皇太子殿下のご随行のため、政府内の資源・エネルギー関係者と意見交換する時間が十分は取れないのは残念であるが、近いうちにもう一度訪伯し、突っ込んだ意見交換をしたいと思う。

7.なお、首都ブラジリアは1962年につくられ、リオから首都移転を行った人工の街で、広大な湖(これも人工)のほとりに翼型に計画され、リゾート地にある街の雰囲気である。そして、この翼のコックピットの部分に大統領府が位置する。16年前に訪れた時には、周りに何もなかったイメージが記憶にあるが、今や人口は約200万人の大都市となっている。は国会議事堂、はブラジリアの街並み、はブラジルの下院議員の方々との昼食会。