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インド出張報告(その1)(ニューデリー編)
1. この5月の連休は、3月に続いて今年2度目のインド出張となった。
今回は、4月28日~30日の小泉総理インド訪問の際にマンモハン・シン首相(3月に私もお会いしました)と合意した「アジア新時代における日印パートナーシップ共同声明」の早速の具体化のために、カマル・ナート商工大臣、ムンジャル・CII(インドの経団連)会長・ヒーローホンダ会長はじめ関係大臣、関係団体と意見交換を行ったものである。

2. ナート商工大臣との間では、以下の4項について合意した。①インド工業省に日本企業が投資を考える際の相談窓口を設置すること、②秋以降、日本側より、経団連、同友会、ジェトロ関連(中小企業)などいくつかの投資ミッションを行うこと、③「共同声明」にある「貨物鉄道」などインフラ整備についてODA(特に、日本企業が行うSTEPローン)を活用すること、④日本からのODAについては、今後ともインドが最大の受取国の一つであること。また、ナート大臣より(1)世界的に、鉄鉱石が不足する中、インドにはまだまだ埋蔵量があり、日本に対し安定的に供給するために(いわば、その見返りとして)採掘投資を行う日本企業や、高炉を投資する日本の鉄鋼メーカーに声をかけてほしい、(2)この10年間、インドから日本にマンゴーを輸出すべく努力しているが、未だ実現していない。是非実現させたい、との要望も受けた。(1)については、民間企業の話であるのでどこまで実現できるかわからないが、鉄鉱石は多くの企業が不足しており、是非多くの企業に声をかけてみたい。また、(2)については、インド側の検疫もあることもわかったが、いずれにしても農水省の専門家を派遣するなど、前向きに対応したいと思う。

3. また、ムンジャル・CII会長との間では、日本からの投資ミッションの受け入れについて合意を得られたし、CIIの推薦するインド側若手議員団と定期的に意見交換を行うことも合意した。政治と経済の両面分野で、日印の信頼関係を構築していきたい。

4. 他にも、日印議員フォーラムの会長クマール議員にもお会いし定期的な交流を約束したし、IT省のアハマド大臣には、日本のIT業界、特に組み込みソフトなどソフトウェア業界がインドとの交流を望んでいること伝え、「共同声明」にある「日印ICTフォーラム(情報通信技術フォーラム)」の開催にあたって、これら企業の参加も含め、インド側との交流について合意をした。また3月にもお会いしたラジャセカラン計画大臣とは、農村部における電力開発において、太陽光発電やさとうきびの搾りカスからのバイオマス発電を提案し、前向きに検討することとなった。同大臣はインド独立の際の立役者の一人であり、77才と高齢ではあるが、ガンジー直系のなかなかの人物である。

5. 全体として、日本の技術、日本の戦後の高度成長に対する尊敬の念と、日本との経済交流に極めて強い意欲を感じたが、一方で、インド側としてもその技術力に誇りも持っており、インド国内に投資を求めるだけではなく、日本も含めた世界への進出も視野にいれ始めていることに対し、若干の脅威も感じずにいられなかった。
2050年には、日本の経済規模は中国、そしてこのインドにも追い抜かれてしまうとの予測もある。日印で切磋琢磨しながら、同時にさらなる信頼関係を構築していきたいと思う。幸い中国と違って、歴史問題もなく(むしろ、歴史的には関係が深く)対日感情も良く、そして何より民主主義の国であり、内政が安定している。しっかりと信頼関係を深めていくことが大切である。

6. なお、小泉総理の訪印の直前に、中国の温家宝首相が、文化人約80人とともに4日間インド国内に滞在し「インドの国連常任理事国入りに賛成」の意を示すなどし、かなり存在感を示していたことを心配していたが、その後、中国が「日本の国連常任理事国入りに反対」することを表明したが、インドは日本と共同歩調で常任理事国入りを考えているのである。インドだけ常任理事国入りし、日本が常任理事国になれないことはあり得ない、結局中国は「インドに対するリップサービスか」との印象になっていた。
そもそも、中印両国は、ヒマラヤ周辺の国境を巡って長年の争いがあるわけだし、さらに、インドからすると「民主主義もなく、人権も無視するような国がどうして途上国の代表のような顔をして、常任理事国になっているのか」との思いも強く、中印の信頼関係は、結構底の浅いものであることもわかった次第である。いずれにしても、日印の信頼関係を深めることが、アジアの平和を発展には不可欠である。