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消費税増税の前にやるべきことがある!
1.野田・民主党政権は、2013年からの消費税増税を決めようとしている。野田総理自身「(増税は)私が先頭に立って政府部内、そして与党内での議論を引っ張っていく」と力が入っている。私も、医療・年金・福祉を充実し安心したものとするため、消費税を増税することは必要だと考えている。かつての“上げ潮派”のように、成長すれば増税は必要ない、との立場は取らない。少子化・長寿化が急速に進む中で、現在現役世代の3人で1人のお年寄りを支えている状況が、2025年には2人で1人を、そして、2055年には1人で1人を支えることになり、若い世代の負担は急増する。若い人の負担が増えれば、結婚が遠のき、子どもの数はさらに減り、悪循環となる。したがって、消費税増税により、幅広い世代が広く薄く負担し、社会保障を充実したものとすることが望ましいのは多くの人に理解されていることと考えている。また、社会保障が充実することにより、その安心感から日頃の消費が増え、経済にプラスに傾く面もあると指摘されている。

2.しかし、である。消費税増税の前にやらなければならないことがあるのである。
第一に、デフレ・円高を止め、日本経済を成長路線に戻すことが急務である。デフレが続き、経済が縮小する中で、消費税増税を行えば、益々経済は縮小してしまう。
そこで、デフレとその脱却について見てみたい。デフレの状況で、仮に、一本100円のペットボトルの水が、90円に値下がりしたとしよう。一体、何が起こるか?
①まず、同じ価格のペットボトルの水を手に入れるのに、10円玉が10枚必要だったのが、9枚で足りるようになったわけだから、実は、10円玉の価値が“上がって”いるのである。即ち“円の価値”が上がっており、当然“円高”になるのである。そして、他国(米国やヨーロッパ)で、インフレ状況であれば、その国の通貨の価値は下がり、その相対的比較から、円高はさらに激しくなるのである。

②また、円の価値が上がっているのであるから、同じ金額の借金でもより“重く”感じることとなる。即ち、1000兆円もの借金をかかえる国や、仮に1000万円の借金をしている中小企業、住宅ローンを抱える世帯にとっては、借金がより重く肩にのしかかってくるのである。即ち、経済活動は、停滞するのである。

③さらに、ペットボトルの水を売っている業者にとってみれば、値下がりにより売り上げが減るから、従業員の給与を下げたり、協力(下請)企業への支払いを下げようとする。すると、それらの人々の購買力が益々低下するから、物価はさらに低下する、つまり、どんどん物価が下がり、経済が縮小していくのである。正に「デフレ・スパイラル」(デフレ循環)である。このことは、土地・住宅により顕著である。例えば、仮に、3000万円の住宅が2800万円に値下りすれば、「もっと下がる」との期待から、買い控えが起こり、実際に価格は一段と下がることになるのである。

3.以上のことから、デフレ(特に、デフレ・スパイラル)を止めないと、円高防止も、日本経済の再建もあり得ないのである。したがって、通貨の価値を下げるために、日銀はより大胆な金融緩和を断行しなければならない。具体的には、国債を大胆に買い入れるとともに、ETF (指数連動型上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)といった実経済にもプラスの作用がある、リスク資産をもっと買い入れるべきである。さらには、外為特会の仕組みと同じように、短期証券を発行して、例えば岩田一政日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)が提案しているように、50兆円規模の基金を創設し、苦しんでいる欧州を支援するため、EFSF債(欧州金融安定化基金債)などを購入することも一案である。結果として円高ユーロ安是正にも役立つことになる。こうした金融緩和策を大胆に行うことにより、デフレを脱却し、1~2%のインフレを実現することが大事なのである。
つまり、デフレ・円高を脱却せずして増税はあり得ないのである。

4.第二に、その上で2%程度の実質成長を実現すべく、規制緩和や法人税ゼロ特区、先端分野での人材を結集しての国家プロジェクトの実施など、成長政策を実行しなければならない。1~2%のインフレと2%の実質成長で3~4%の名目成長を実現すれば、税収増が期待できるのである。増税の前に、経済を成長路線に戻し、税収を増やすことが必要である。

第三に、野田総理が先頭に立って引っ張るべきは、増税の前に「国会議員の定数削減」や「国家公務員の人件費削減」など、“歳出削減”なのである。しかし、野田総理は、こうした政策は担当者に任せ、自ら引っ張ろうとせずに、増税だけを進めようとする姿勢である。これには納得できない。国会議員の定数削減については、まず、何よりも憲法違反である一票の格差是正が急務であり、さらに、私たち自民党が公約している議員定数約3割削減(衆参合計722名から500名に削減)を実行しようではないか。
また、国家公務員の人件費削減についても、“人件費7.8%削減”については、民主党、自民党、公明党の三党で、少なくとも“数字”は同じなのであるから、何故、臨時国会を延長してでも実行しようとしないのか。労働組合の顔色ばかりうかがって、この国会を閉じようとしているのは論外である。この国家公務員の給与削減をやらずして、増税などあり得ない。
ちなみに、あれだけ“天下り根絶”と言っていた民主党が、天下りについては最近では全く言わなくなり、省庁からの幹部の天下りが再び横行しているのが実態である。

5.以上、財政再建のためには、①デフレ・円高からの脱却と成長による増収、②歳出削減、が大前提であり、その上で社会保障の安定化のために足りないところを③消費税、によりカバーするのが道筋である。野田総理は、「自民党は既に消費税10%を主張している」と言うが、その後、大震災、超円高、タイの大洪水と、日本経済を巡る環境は極端に悪化しているのである。これまで以上に、大胆な政策による①デフレ・円高からの脱却、②成長戦略、そして③歳出削減への確固たる決意が打ち出さなければならない。大阪府・市の選挙で維新の会が勝利したのも、リーダーにこうした覚悟、決意が見えたからに違いない。過去の成功体験にあぐらをかくことなく、不断の改革を行っていく覚悟が必要である。来年は、その“覚悟の勝負”の年となるのは間違いない。私にとっても覚悟を示す年としたい。