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「長寿医療制度の説明不足!所得の低い方の負担は低くなる」
1.本日から、評判の悪い「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」の保険料の年金からの「天引き」が始まった。大変なご批判を頂いている。「年金データの名寄せもきちんとできてないのに『天引き』とは何事か」と。また、「支給はろくにしないのに、取るときだけは取るのか」と。ひとつひとつごもっともである。しかしながら、冷静に考えてみると、「天引き」自体は、行政コスト削減につながるし、何より保険者にとっても、これまでのようにわざわざ金融機関に振り込みに行かなくても済み、便利になるはずである。ところが、このような制度変更について、事前の説明が十分ではなく、新しい保険証が手元に届かなかったり、保険料が一体いくらになるのか、についても通知がないといった不手際が生じている。ただでさえ、社会保険庁のデータ管理の悪さで行政は信頼を失っているのに、何たることかと思う。年金についての不安が拡大しているときだけに、ミスをせず真摯に取り組んでもらいたい。

2.そもそも、この「長寿医療制度」は、増加する医療費の中でも、75歳以上の高齢者の医療費が急増しており(2006年医療費総額約33兆円のうち、75歳以上の高齢者の医療費約11兆円、2025年見通し同65兆円のうち、同30兆円)、この医療費の急増に対応するため、高齢者の医療に税金を重点的に投入(5割)しつつ、所得のある高齢者には、応分のご負担をお願いしようとするものである。諸外国でも類を見ないスピードで、少子化と高齢化が急速に進展する中で、若い世代にこれ以上の負担を求めることも難しくなっている。今回の新たな制度の設立は、以上のような考え方に立っているのであり、行政の不手際や説明不足は厳に反省しなければならないが、考え方は是非ご理解を頂きたいと思う。

3.実際、所得の少ない方々には、しっかりと配慮を講じている。例えば、単身で平均的な厚生年金年額201万円(月額16.7万円)で生活しておられる方は、負担は小さくなる。例えば、私の地元の4市での例を取ると、次のようになる。

          以前     今回
   明石市   84,000 → 73,900 (-10,100)
   淡路市   90,720 → 73,900 (-16,820)
   洲本市   78,720 → 73,900 (- 4,820)
   南あわじ市 76,160 → 73,900 (- 2,260)
                       (単位:円/年)

是非しっかりと、ご自身の年金額を確認して頂ければと思う。所得の低い方々の負担は少なくなっているはずである。

4.なお、今までサラリーマンの子などに扶養されていた方は、これまで保険料を負担してないが、新たな制度では、同じ額の年金をもらっている国民健康保険に加入している方と同様に、保険料を負担して頂くことになる。しかし、急に負担が増えるのを避けるために、以下の軽減措置(激変緩和措置)を取っているところである。

20年 4月~20年9月は、保険料負担を凍結(負担ゼロ)
20年10月~21年3月は、本来の保険料の1割負担
21年 4月~22年3月は、本来の保険料の半額負担

5.以上、是非とも「長寿医療制度」創設の趣旨をご理解頂きたいと思うが、これ以上、皆さんに負担増をお願いできない状況まで来ているのも事実である。安心して頂ける医療制度の確立に向けて、引き続き抜本的な改革を目指し議論を深めたい。