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~EU拡大に思う~  <国会レポート(24)>
1.EU加盟15ヶ国に加えて、5月1日新たにエストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、スロバニア、ハンガリー、キプロス、マルタの10ヶ国がEUに新規加盟した。このことは、日本にとってどのような意味を持つのであろうか。


2.まず、EUにとっての意味を考えると、

①エストニア、ラトビア、リトアニアというバルト海3ヶ国は、元来ロシアが海へ出て行く戦略上の要地であり、これによりEUはロシアと国境を接することとなり、ここを取り込んだことの戦略的意義は大きい。(なお、この3ヶ国は、人口の合計が700万人でありながら、ロシアへの配慮からイラクに300人もの軍隊を派遣している(この人口比で計算すると、日本から6000人くらいの派遣に匹敵する)。これは、即ち、ロシアがアメリカへの協力を優先していることの現れであるが、仏のシラク大統領からすれば、「何だ」ということになる。)

②マルタ、キプロスの小国についても、地中海における戦略的な重要な位置を占めている。

③しかし、問題は経済格差である。今回新規加盟10ヶ国の平均の所得水準は、既存の加盟国15ヶ国の平均所得の約40%にすぎない。例えば83年にEUに加わったアイルランドは、同様に既存加盟国の約40%の所得水準であったが、約20年間でEU平均を上回るまでに成長しているし、86年加盟したポルトガル、スペインについても加入当時約60%の水準であったものが大きく上昇している。

④今回新たに加盟する10ヶ国についてはどうか。平均の所得水準は、既存加盟国の約40%であり、かつてのアイルランドと変わらないがアイルランドに見られたような
(1)ブラッセル(EU本部)からの支援
(2)投資の増大
(3)貿易の増加
が起こりうるのかどうか、がポイントである。

⑤現在の経済状態から言って、EU本部にかつてのような支援は期待できないし、新たな国々は旧社会主義国であり、アイルランドのように投資が急増することは考えにくい。また、貿易についても、これらの国々はロシアとの交流が中心であるだけに、それをどれだけ西側との貿易に振り替えられるだろうか。このように考えると、必ずしも全体として経済成長に大きく寄与するかどうか判断しかねるが、EU以上に経済格差の大きいアジアの国々の経済統合を考えていくには、大いに参考になるはずである。今後、20~30年かけてアジアにおいて通貨統合も含めた経済・政治統合を実施することを私自身のライフワークの一つとしてがんばっていきたいと思う。


3.そして、日本にとって最も大きな問題は、ロシアである。既に、WTO加盟をにらみロシアは、EUと交渉を進めているが、今後、ロシアのEUシフトが進むことは、間違いない。一方で、ロシアは、日本にとって対北朝鮮、対中国との関係を考えた場合、戦略的に極めて重要な位置を占めるし、潜在するエネルギー資源の視点からも、極めて大切である。今後、ロシアを引きつけるためにも、①極東開発について、日本が全面的に協力する姿勢を示すとともに、②できるだけ早くアジアの経済統合への道筋をつけ、ロシアに魅力を感じさせることである。もちろんロシアにしてみれば、EUとアジアをうまく競わせながら、様々な協力を引き出そうとするにちがいない。6月2日、ロシアのザドルフ議員(国家院対日議員連副代表)とこのような視点で意見交換を行った。まだ、私より1歳若い40歳である。今後、若い世代で新しい時代の日ロ関係も築いていきたい。


衆議院議員 西村やすとし