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米国の大停電に思う~米国型システム VS. 日本型システム~  
1. ニューヨークをはじめ北米で大停電が起きた。未だ原因解明の努力が進められているが、送電システムの老朽化が要因の一つと言われている。

2. 米国は、一般的に社会システムの「安定性」よりも「競争」を通じた「効率性」を重視し、様々な制度の設計を行っている。電力業界も例外ではなく、発電事業の自由化を進めてきた。その結果、確かに日本に比べ安い電気料金を実現しているが、他方、収益のあがらない送電システムについては、コスト削減のため、補修などの設備投資が抑制され、結果として、今回のような大停電を引き起こしたものと考えられている。

3. 一方、日本の社会システムは、これまで「効率性」よりも「安定性」や「平等性」を重視してきた。電力業界についても、確かに米国に比べ電気料金は高いが、停電はほとんどなく、「安定」的な電気供給を実現している。

4. 例えば、医療制度を見ても、両国のシステムの違いがよくわかる。日本は、国民皆保険で、どの医師にでも診てもらえる「フリーアクセス」という世界に類を見ない「安定性」、「平等性」を実現している。他方、米国は、医療制度も「競争」「効率性」を重視しており、高度な先端医療が発達しているが、その一方で、保険に加入しておらず医師にかかることのできない国民も多数存在する。

5. ここで、どちらの国のシステムが優れているかを議論したいのではない。それぞれの国の国民性や歴史的背景で制度はできあがっている。言いたいのは、この国の将来に向けて、「安定性」・「平等性」と、「競争」・「効率性」の両方とも大事であり、両立する「第三の道」を構築できないかということである。日本の電力業界においても、自由化の議論が進められているし、医療制度においても、大病院と診療所の役割分担や医療情報の公開や情報化を通じた効率化が図れないか、との議論が進んでいる。世界に類のない「安定性」を維持しつつ、活力やダイナミズムを生み出す新しいシステム、すなわち「第三の道」を考えていきたい。


西村やすとし