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北朝鮮問題に思う ~外交力をつけよ~
1.小泉総理の北朝鮮訪問は衝撃的な結果となった。私の活動をボランティアで支えてくれている方々の中に有本恵子さんの実の叔母さんがいる。彼女は、「有本さん、帰国か」という事前報道を見て、姪(めい)っ子さんの帰国を心から楽しみにしていた。わざわざ神戸のそごうまで出かけ、帰国した時のプレゼントを買いに行ったりしていたのである。それが、死亡との知らせである。彼女はうっすらと涙を浮かべていた。胸の奥がきゅっと締め付けられるようなつらい時だった。他人事ではないのである。北朝鮮の問題は我々の身近な問題なのである。

2.いったい、この20年間、日本の外交は何をやっていたのか?国民の安全を守ることこそ、外交、政治の役割ではないのか?小泉総理はこの20年間のツケを一身に浴びせられて大変辛い立場であろうが、この拉致問題の解明なしに国交正常化はあり得ない。毅然とした対応を望みたい。

3.しかしながら、今回の訪朝の成果は大きいことも事実である。ミサイル発射の凍結延期や今後、拉致のような行動を取らせないことを北朝鮮に約束させたわけだから、トップの意思として訪朝した成果は大きい。このことは、未来に向かっての決断として率直に評価しなければならない。

4.それにしても、北朝鮮は「したたか」である。今回の8人死亡の結果が、もし総理の出発前に知らされていたら、国内世論により総理は訪朝出来なかったかもしれない。また、この事実を首脳会議の直前に知らされた総理は文字通り「頭が真っ白」になったに違いない。そして、昼食時に「謝罪がなければ、共同宣言への署名はしない。」と考えていたところ、午後の会議の冒頭での金総書記自らの拉致に対する謝罪である。これまで自分の非など認める国ではなかった。それをあっさり認めたのである。アメリカからテロリスト国家と言われたり、食糧不足だったり相当追い込まれていることの裏返しであろうが、総理にしてみれば、あっさり認められ、肩すかしを食った感じではなかったか。会議はおそらくこのように北朝鮮ペースで進んだに違いない。翻弄されている感すらある。今後の交渉で北朝鮮に負けない「したたかさ」が求められる。

5.今回、日本政府は事前情報に惑わされ相当混乱していたようである。前述の有本恵子さんの叔母さんもそうであったが、国民は何人か帰国出来るかのようなの印象をもっていた。期待感があまりにも高まりすぎていた。外交とは結局「内政」である。国民がどう思うかである。しっかりと説明することが必要だし、正確な情報を伝えることが大事である。特に国民にとって不利益な情報ほど包み隠すことなく、出来るだけ早く知らせてやることが必要である。日本ハムにしても、東京電力にしても「隠す」ことが命取りになる時代である。

 日本の“外交力”向上に私自身も努力していきたい。


西村やすとし