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住民基本台帳ネットワークを考える視点~IT革命の本質は分権・分散~
1.住基ネットワークについて喧喧諤諤の議論がなされている。国分寺市や東京都杉並区は離脱を表明したし、東京都知事や総務相は「法律違反になる可能性がある」と主張する。また 横浜市は「参加はするが、情報を提供するかどうかは個人の意思に委ねる。」との妙案を出してきた。今回のこの問題について、どのように考えればいいのだろうか?
2.まず第一に、このネットワーク化のメリットを国がきちんと説明することが必要である。何のための制度なのか今一つよくわからない。例えば、インターネットを使って、自宅において、住民票を取得できたり、婚姻届を届けることができたり、あるいは、納税のための申告を自宅や職場からできるようになるということであれば、各自治体が情報化を進めれば可能な話のような気がしてならない。中央政府主導で、中央集権的に進める理由はどこにあるのか?十分な説明が必要である。そもそもIT技術の本質は、「ユビキタス」(どこにでもある、即ち、どこでもできる)であり、「集権」ではなく、「分権」「分散」なのである。つまり、世界中どこにいても必要な情報を取得・発信できることが、情報化社会の特徴なのだから、根本的に集権的な発想はなじまない。それでも、「中央集権的」「総務省主導」で進めるということであるから、住民のメリットやネットワークを進める理由を十分に説明することが必要である。ほとんどの国民が今回のネットワーク化の意味、メリットを理解していない。
3.総務相は、このネットワークを進める理由の一つに「これまで投資した予算数百億が無駄になる」と主張しておられるが、これは本末転倒の議論である。もし、国がこのネットワークの必要性、意味を十分に国民に説明できないのであれば、逆に、この「無駄」な予算を使ってしまったことの責任を問われるべきである。(ただし、実際には、各自治体において、これまで費やされた予算で開発・調達されたハード・ソフトを活用し、まさしく地方主体の、そして、独自の、すなわち分権型・分散型のIT化を進めればよいのであるから、決して無駄にはならないと思う。地方が競争をしながらIT化を進めるという意味で、まさに「地方主権なくしてIT革命なし」である。アメリカでIT化が進んだのも、各洲が自由な発想で、例えば、運転免許の書換えまでも自宅でインターネットを使ってできるようにしたことが大きい。なお、地方が独自にIT化を進めると汎用性が無くなるとの議論もありうるが、全国一律のネットワークを作ることの必要性をきっちり説明することが先である。)
4.その上で、セキュリテイやプライバシ―の問題が議論になる。しかし、私は、この問題は本質的な問題ではない、と思っている。現に、今でも、自治体職員による各自治体の住民情報の漏洩事件が頻繁に起こるし、ハッカーやウィルスによる侵害も十分に起こり得るのである。今回のネットワーク化の如何にかかわらず、この問題は考えなければならないのある。つまり、今回のネットワーク化に際して、これらの危険性に対し、万全の対策をしているかどうかのチェックや説明はもちろん最低限必要なことであるが、もし、このネットワーク化の意味やメリットを国民が納得する形で十分に説明し得るのであれば、予期せざることが起こり得るからといって、推進を躊躇すべきではない。
例えば、飛行機が飛ぶようになったとき、落ちるかもしれないから飛行機を飛ばすのはやめよう、という発想は人類の発展の可能性をつんでしまう考え方である。もちろん、その時点で考え得る全ての安全対策を講じ、万全の体制で飛ばすことはいうまでもないが、飛行機で移動することのメリットや意味を十分納得・理解できるから、事故が起こる確率がゼロでなくとも、人は飛行機に乗るのである。
同じ議論である。すなわち、新しい技術が開発されたときよく起こる議論である。現在は、日々新しい情報通信の技術が開発されている、高度情報化社会の入り口である。将来、今の段階で全く予期しない事態がおこるかもしれないが、もし、人類(住民)にとって大きなメリットがある、と説明でき国民が納得できれば、多少のリスクを覚悟しても躊躇せず情報化を推進すべきだと思う。(もちろん、セキュリテイやプライバシーの侵害等の大事件が起こるかも知れず、推進する政治家は、人類の発展のために、政治生命をかけて任に当たらなければならない。)
しかし、繰り返しになるが、今回のネットワーク化については、十分に納得できる理由が示されていないことが最大の問題である。
5.ちなみに、飛行機を使うことのメリットは理解できても、飛行機に乗るか乗らないかの選択は個人の自由である。同様に、社会の環境として、ネットワーク化された高度な情報通信環境が整備されたとしても、それを利用するかどうかは、国民一人一人の判断に委ねられるべきである。その意味で、横浜市長の示した方向性は、きわめて示唆に富むものとして評価できる。
いずれにしても、今一度、政府は今回のネットワーク化の目的、住民にとってのメリット、そして、安全対策について十分に説明をすべきである。
西村やすとし
2.まず第一に、このネットワーク化のメリットを国がきちんと説明することが必要である。何のための制度なのか今一つよくわからない。例えば、インターネットを使って、自宅において、住民票を取得できたり、婚姻届を届けることができたり、あるいは、納税のための申告を自宅や職場からできるようになるということであれば、各自治体が情報化を進めれば可能な話のような気がしてならない。中央政府主導で、中央集権的に進める理由はどこにあるのか?十分な説明が必要である。そもそもIT技術の本質は、「ユビキタス」(どこにでもある、即ち、どこでもできる)であり、「集権」ではなく、「分権」「分散」なのである。つまり、世界中どこにいても必要な情報を取得・発信できることが、情報化社会の特徴なのだから、根本的に集権的な発想はなじまない。それでも、「中央集権的」「総務省主導」で進めるということであるから、住民のメリットやネットワークを進める理由を十分に説明することが必要である。ほとんどの国民が今回のネットワーク化の意味、メリットを理解していない。
3.総務相は、このネットワークを進める理由の一つに「これまで投資した予算数百億が無駄になる」と主張しておられるが、これは本末転倒の議論である。もし、国がこのネットワークの必要性、意味を十分に国民に説明できないのであれば、逆に、この「無駄」な予算を使ってしまったことの責任を問われるべきである。(ただし、実際には、各自治体において、これまで費やされた予算で開発・調達されたハード・ソフトを活用し、まさしく地方主体の、そして、独自の、すなわち分権型・分散型のIT化を進めればよいのであるから、決して無駄にはならないと思う。地方が競争をしながらIT化を進めるという意味で、まさに「地方主権なくしてIT革命なし」である。アメリカでIT化が進んだのも、各洲が自由な発想で、例えば、運転免許の書換えまでも自宅でインターネットを使ってできるようにしたことが大きい。なお、地方が独自にIT化を進めると汎用性が無くなるとの議論もありうるが、全国一律のネットワークを作ることの必要性をきっちり説明することが先である。)
4.その上で、セキュリテイやプライバシ―の問題が議論になる。しかし、私は、この問題は本質的な問題ではない、と思っている。現に、今でも、自治体職員による各自治体の住民情報の漏洩事件が頻繁に起こるし、ハッカーやウィルスによる侵害も十分に起こり得るのである。今回のネットワーク化の如何にかかわらず、この問題は考えなければならないのある。つまり、今回のネットワーク化に際して、これらの危険性に対し、万全の対策をしているかどうかのチェックや説明はもちろん最低限必要なことであるが、もし、このネットワーク化の意味やメリットを国民が納得する形で十分に説明し得るのであれば、予期せざることが起こり得るからといって、推進を躊躇すべきではない。
例えば、飛行機が飛ぶようになったとき、落ちるかもしれないから飛行機を飛ばすのはやめよう、という発想は人類の発展の可能性をつんでしまう考え方である。もちろん、その時点で考え得る全ての安全対策を講じ、万全の体制で飛ばすことはいうまでもないが、飛行機で移動することのメリットや意味を十分納得・理解できるから、事故が起こる確率がゼロでなくとも、人は飛行機に乗るのである。
同じ議論である。すなわち、新しい技術が開発されたときよく起こる議論である。現在は、日々新しい情報通信の技術が開発されている、高度情報化社会の入り口である。将来、今の段階で全く予期しない事態がおこるかもしれないが、もし、人類(住民)にとって大きなメリットがある、と説明でき国民が納得できれば、多少のリスクを覚悟しても躊躇せず情報化を推進すべきだと思う。(もちろん、セキュリテイやプライバシーの侵害等の大事件が起こるかも知れず、推進する政治家は、人類の発展のために、政治生命をかけて任に当たらなければならない。)
しかし、繰り返しになるが、今回のネットワーク化については、十分に納得できる理由が示されていないことが最大の問題である。
5.ちなみに、飛行機を使うことのメリットは理解できても、飛行機に乗るか乗らないかの選択は個人の自由である。同様に、社会の環境として、ネットワーク化された高度な情報通信環境が整備されたとしても、それを利用するかどうかは、国民一人一人の判断に委ねられるべきである。その意味で、横浜市長の示した方向性は、きわめて示唆に富むものとして評価できる。
いずれにしても、今一度、政府は今回のネットワーク化の目的、住民にとってのメリット、そして、安全対策について十分に説明をすべきである。
西村やすとし