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21世紀の福祉を考える~自立と共生~
JR明石駅前に、昨年11月「アスピア」という複合商業施設がオープンした。これまでに何度か訪れているが、つい先日、1階にある「シアトルズ・ベストコーヒー」という喫茶店にコーヒーを買いに行くと、車椅子に乗った障害を持った方がコーヒーを飲んでおられた。私はうれしくなって、挨拶を交わしたのであるが、障害を持った方やお年寄りにもっともっと街に出てほしいと思う。そして、そういう社会にしていきたいと思う。同時に、次の3つのことを考えた。

自立できる環境の整備
障害を持った方がいくら街へ出たいと思っても、街中に段差があれば、車椅子の方は出歩けない。すべての歩道や公共的な施設はすべてバリアフリーにすべきである。そして、商店街も段差をなくし、例えば、電動車椅子の貸し出しを行い、買い物をエスコートする人がつけば、もっとお客さんを増やせるかもしれない。(英国では、これにより商店街が活性化している。)
そして、何より「健常者」といわれる人々の側の心のバリアをはずすことが大事である。人間はすべて違うのである。違って当たり前である。顔も違えば、体の大きさも違う。すべての人が共生できる社会を築いていくべきである。

「バリアフリー」から「ユニバーサルデザイン」へ
街の歩道の段差をなくすことや、家の中の段差をなくすことは、何も高齢者や障害を持った方のためだけではない。健常者にとっても、つまづくことがなくなり、心地良いものである。(足の爪先をぶつけて痛い思いをすることもなくなる。)ベビーカーを押す若いお母さんにとっても大変に楽になる。
「ユニバーサルデザイン」とは、このような考えに基づくものである。お年寄りや障害を持った方のためだけに「バリア」をなくす「バリアフリー」の考え方ではなく、すべての人にとって心地良い、普遍的なデザイン「ユニバーサルデザイン」の考え方で、公共的な施設や社会の仕組みを考えるべき時代である。
仮に、電子投票が制度化され、家庭で選挙の投票ができるようになれば、寝たきりになっている方でも投票できるようになる。すべての人にとって良い制度である。「ユニバーサルデザイン」に基づく社会の新しい仕組みづくりが急がれる。


NPOの活動の重要性
世の中の活動は、これまで公的機関(国、自治体など)の活動と民間の活動に分けられてきた。その間に「第3セクター」と呼ばれる中途半端な機関による事業もこれまでたくさん行われてきたが、「何故第3セクターにする必要があるのか」を徹底的に議論し、できることなら、公がやるのか、民がやるのかはっきりさせるべきである。そうしないと、責任が曖昧になり、結局税金の無駄使いになる。
むしろ第3の分野として、いわゆるNPO(非営利法人)の活動が極めて重要である。介護保険の対象となる事業は報酬が払われるから、民間企業としての活動が可能である。しかし、その対象とはならない、例えば「お年寄りのお話し相手」などは、営利事業として行うことは難しい。むしろ、このような活動はNPO法人が行うべき分野であり、現実に法人を別にするケースも増えている。福祉や環境の分野では、NPO法人が活動できる領域が多い。米国では、NPO法人による雇用が1000万人にも達するとの統計もある。すべて無償のボランティアで行う必要もなく、人件費や実費を負担してもらうことによって、お互いにハッピーになれるのである。NPO法人の活動を支援するための税制の優遇措置も手当てされたが、まだまだ不十分である。早期の改善が望ましい。

以上、思いつくままに筆をとったが、一言で言うと、21世紀は「自立と共生」の時代のように思える。すべての人の「違い」を認めつつ、「自立」していく、そして「共生」 する社会。そんな社会の実現に全力を尽くしたいと思う。
そして、同じような思いで日々実践しておられる翁寿園の皆様に心よりエールを送りたい。