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関西経済復活の妙手はあるか?
1.関西の落ち込みひどい
10月の全国の失業率が5.3%となり、大さわぎになったが関西は6.3%である。本当に厳しさが増している。もちろん全国的な構造不況であるが、この関西経済の落ち込みの背景は何であろうか?
①第一に、IT不況の影響が大きい。関西を支える基幹産業の電機メーカーの受注激減である。松下電機産業、シャープ、京セラ、三菱電機、村田製作所 等々。IT革命は大きな変化だが、「ハード」即ちモノづくりの部分は常に景気変動の波を受ける。
半導体産業が、技術革新→需要増大→量産→在庫増加(価格低下)→収支悪化→減産→技術革新(新製品導入)
のサイクルを繰り返しているのは周知の事実である。(米国の半導体産業は、一早く、このような景気環境の波を受けにくい製品に生産を特化している。)
②他方、例えば現在、ウイルスが蔓延しておりセキュリティ・システムなどいわゆる「ソフト」面は引き続き引き合いが多い、しかしITのソフト面の産業は東京一極集中しているのが実情で、関西には、景気を支えるだけのソフト産業の集積がない。
③金融機関の再編も効いている。たとえば銀行の合併により、支店の統廃合が進み、あの御堂筋ですら空店舗、空ビルが出ている。東京であれば外資系の金融機関の進出もあり、再開発により高層ビルの建設が続いているが、大阪にはそれだけのエネルギー、経済力が欠けている。
④そして、自動車産業の大きな拠点がないことも大きい。トヨタ、ホンダ、日産は過去最高の利益を出している、やはり部品など関連産業の裾野が広い。(ダイハツの工場集約の対象となっている。)
⑤そして、東大阪の中小企業はじめ、関西の強みでもある「モノづくり」が「メイド・イン・チャイナ」製品によっておびやかされている。いや、取ってかわられているのである。中国の成長はすごい。かつては「安かろう悪かろう」だったのが、急速に変化している。品質が向上し値段も安いのである。
2.このような中で、関西経済に明るい兆しはあるのだろうか?何をすればいいのか?
①第一に、「洗剤のいらない洗濯機」開発の精神である。
開発に当たっては社内でも議論があったと聞くが、「発想の転換」である。
大阪らしいユニークな発想だと思う。三洋電機という大企業でもこのような開発を認めるのだから、いわんやもっとフットワークのいい中小企業をや、である。
一社でできなければ何社かでネットワーク・アライアンス(同盟)を組めばいいのである。中国の珠江デルタ地域の東莞市が「パソコンの部品はすべて1時間以内にそろう」と自慢しているが、本来、大阪もそうである。およそどんな部品でもそろうだけの集積があるはずである。何とか知恵を絞って、新しい発想に挑戦してほしい。
②「NOVA」という英会話学校を展開する企業がある。10数年ほど前に友人と3人で始めた会社である。「株主」や「取締役」という言葉の意味すら十分に知らなかった猿橋望社長が「国際的なコミュニケーションが進む環境を作りたい」という一心で経営してきた企業で、今や従業員9000人、毎年1000人の採用をしている。1996年には店頭公開している。
また加古川市に本社を置く「とりどーる」という企業がある。こちらも10年前に夫婦二人で焼き鳥屋さんを始め、今や明石、神戸、大阪まで22店舗のチェーンを持つ企業に成長している。
このように頑張っている関西企業も枚挙にいとまがないのである。チャンスは誰にでもある。一生懸命やれば必ず報われる
③このように、雇用吸収源となるべき新しい企業は、必ずしも金融やITだけではない。
身近なサービスとして、飲食、福祉、教育、ファションなど可能性があるはずである。自治体の新規産業支援もIT・バイオなど最先端な技術にこだわるべきではない。関西らしいユニークなサービスを育てるべきである。
④毎日、新聞を取ってきて読もうとすると、求人広告が結構入っている。失業率6.3%と言いながら、何故かいわゆる「ミスマッチ」である。おそらく、需要がないための失業は2%前後で、4%前後はミスマッチによるものだと思う。即ち、飲食関係や調剤薬局、コンピューター関連など求人はあるが、資格や、年齢、条件が合わないのである。もし、国や自治体が、いわゆる職業訓練(トレーニング)にもっと支援をすれば、失業率は減るはずである。このための予算であれば、将来に生きるお金であるから、国債発行額が増大しても(30兆円の枠を超えても)支出すべきである。誰も通らない道路に使うのとはわけが違う。
また、失業者の側も、これまでの所得にこだわってはいけない。住宅ローンの支払いなどを除けば、年間200~300万円で生きていけるはずである。発想を変えなければいけない。
このような観点からは、オランダで成功した、いわゆる「ワークシェアリング」(一人あたりの労働時間、賃金を減らす代わりに、多くの人が雇用されるようにする制度)は、検討するに値すると思う。確かに企業側の社会保障負担が、大きくなる可能性があるが、税制などで手当てしていけばいいのではないか。
3.3つの心構え
苦しい時代を乗り越えるために、気持ちの持ち方を考えてみたい。
①第一に、ノーベル賞を受賞された我が灘高の先輩、野依教授のエピソードを紹介したい。
彼は高校時代、柔道部でならしており、文武ともに「負けずぎらい」で通っていた。「合格して週間誌に名前が出ると情けない」と言って京都大学以外の大学は一切受験しなかった。つまり、「自信」・「プライド」である。日本の産業、そして、日本人は、戦後ゼロからここまでやってきたのである。国民総自信喪失のようにも思えるが、もう一度、「自信と誇り」を持って知恵を絞らなければならない。
②第二に、イチローである。一人で世界に立ち向かい、そして勝利しているのである。また、長谷川滋利投手もいる。彼は体格的にもそれほど大きくなく、そして球のスピードも速いわけでも、日本でもそれほど活躍しているわけでもなかった。しかし、米国内移動中、常に3台のパソコンを持ち、徹底的にデータ収集と分析をしているのである。素晴らしい。「チャレンジ」する気持ち、これさえあれば、頑張れる。もう一度、過去の成功体験を忘れて「挑戦」しなければいけない。
③そして、「いっちょかみ」の精神である。いくら、「誇り」を持って、「挑戦」しても一人でやれることには限界がある。「いっちょかみ」即ち「アライアンス(同盟)」を組んで身軽なもの同士が補強し合うことが大切である。
これらの心構えで、私も頑張っていきたいし、関西経済の浮上を期待したい
10月の全国の失業率が5.3%となり、大さわぎになったが関西は6.3%である。本当に厳しさが増している。もちろん全国的な構造不況であるが、この関西経済の落ち込みの背景は何であろうか?
①第一に、IT不況の影響が大きい。関西を支える基幹産業の電機メーカーの受注激減である。松下電機産業、シャープ、京セラ、三菱電機、村田製作所 等々。IT革命は大きな変化だが、「ハード」即ちモノづくりの部分は常に景気変動の波を受ける。
半導体産業が、技術革新→需要増大→量産→在庫増加(価格低下)→収支悪化→減産→技術革新(新製品導入)
のサイクルを繰り返しているのは周知の事実である。(米国の半導体産業は、一早く、このような景気環境の波を受けにくい製品に生産を特化している。)
②他方、例えば現在、ウイルスが蔓延しておりセキュリティ・システムなどいわゆる「ソフト」面は引き続き引き合いが多い、しかしITのソフト面の産業は東京一極集中しているのが実情で、関西には、景気を支えるだけのソフト産業の集積がない。
③金融機関の再編も効いている。たとえば銀行の合併により、支店の統廃合が進み、あの御堂筋ですら空店舗、空ビルが出ている。東京であれば外資系の金融機関の進出もあり、再開発により高層ビルの建設が続いているが、大阪にはそれだけのエネルギー、経済力が欠けている。
④そして、自動車産業の大きな拠点がないことも大きい。トヨタ、ホンダ、日産は過去最高の利益を出している、やはり部品など関連産業の裾野が広い。(ダイハツの工場集約の対象となっている。)
⑤そして、東大阪の中小企業はじめ、関西の強みでもある「モノづくり」が「メイド・イン・チャイナ」製品によっておびやかされている。いや、取ってかわられているのである。中国の成長はすごい。かつては「安かろう悪かろう」だったのが、急速に変化している。品質が向上し値段も安いのである。
2.このような中で、関西経済に明るい兆しはあるのだろうか?何をすればいいのか?
①第一に、「洗剤のいらない洗濯機」開発の精神である。
開発に当たっては社内でも議論があったと聞くが、「発想の転換」である。
大阪らしいユニークな発想だと思う。三洋電機という大企業でもこのような開発を認めるのだから、いわんやもっとフットワークのいい中小企業をや、である。
一社でできなければ何社かでネットワーク・アライアンス(同盟)を組めばいいのである。中国の珠江デルタ地域の東莞市が「パソコンの部品はすべて1時間以内にそろう」と自慢しているが、本来、大阪もそうである。およそどんな部品でもそろうだけの集積があるはずである。何とか知恵を絞って、新しい発想に挑戦してほしい。
②「NOVA」という英会話学校を展開する企業がある。10数年ほど前に友人と3人で始めた会社である。「株主」や「取締役」という言葉の意味すら十分に知らなかった猿橋望社長が「国際的なコミュニケーションが進む環境を作りたい」という一心で経営してきた企業で、今や従業員9000人、毎年1000人の採用をしている。1996年には店頭公開している。
また加古川市に本社を置く「とりどーる」という企業がある。こちらも10年前に夫婦二人で焼き鳥屋さんを始め、今や明石、神戸、大阪まで22店舗のチェーンを持つ企業に成長している。
このように頑張っている関西企業も枚挙にいとまがないのである。チャンスは誰にでもある。一生懸命やれば必ず報われる
③このように、雇用吸収源となるべき新しい企業は、必ずしも金融やITだけではない。
身近なサービスとして、飲食、福祉、教育、ファションなど可能性があるはずである。自治体の新規産業支援もIT・バイオなど最先端な技術にこだわるべきではない。関西らしいユニークなサービスを育てるべきである。
④毎日、新聞を取ってきて読もうとすると、求人広告が結構入っている。失業率6.3%と言いながら、何故かいわゆる「ミスマッチ」である。おそらく、需要がないための失業は2%前後で、4%前後はミスマッチによるものだと思う。即ち、飲食関係や調剤薬局、コンピューター関連など求人はあるが、資格や、年齢、条件が合わないのである。もし、国や自治体が、いわゆる職業訓練(トレーニング)にもっと支援をすれば、失業率は減るはずである。このための予算であれば、将来に生きるお金であるから、国債発行額が増大しても(30兆円の枠を超えても)支出すべきである。誰も通らない道路に使うのとはわけが違う。
また、失業者の側も、これまでの所得にこだわってはいけない。住宅ローンの支払いなどを除けば、年間200~300万円で生きていけるはずである。発想を変えなければいけない。
このような観点からは、オランダで成功した、いわゆる「ワークシェアリング」(一人あたりの労働時間、賃金を減らす代わりに、多くの人が雇用されるようにする制度)は、検討するに値すると思う。確かに企業側の社会保障負担が、大きくなる可能性があるが、税制などで手当てしていけばいいのではないか。
3.3つの心構え
苦しい時代を乗り越えるために、気持ちの持ち方を考えてみたい。
①第一に、ノーベル賞を受賞された我が灘高の先輩、野依教授のエピソードを紹介したい。
彼は高校時代、柔道部でならしており、文武ともに「負けずぎらい」で通っていた。「合格して週間誌に名前が出ると情けない」と言って京都大学以外の大学は一切受験しなかった。つまり、「自信」・「プライド」である。日本の産業、そして、日本人は、戦後ゼロからここまでやってきたのである。国民総自信喪失のようにも思えるが、もう一度、「自信と誇り」を持って知恵を絞らなければならない。
②第二に、イチローである。一人で世界に立ち向かい、そして勝利しているのである。また、長谷川滋利投手もいる。彼は体格的にもそれほど大きくなく、そして球のスピードも速いわけでも、日本でもそれほど活躍しているわけでもなかった。しかし、米国内移動中、常に3台のパソコンを持ち、徹底的にデータ収集と分析をしているのである。素晴らしい。「チャレンジ」する気持ち、これさえあれば、頑張れる。もう一度、過去の成功体験を忘れて「挑戦」しなければいけない。
③そして、「いっちょかみ」の精神である。いくら、「誇り」を持って、「挑戦」しても一人でやれることには限界がある。「いっちょかみ」即ち「アライアンス(同盟)」を組んで身軽なもの同士が補強し合うことが大切である。
これらの心構えで、私も頑張っていきたいし、関西経済の浮上を期待したい