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中国(北京・内モンゴル・湖南省)出張報告
1.12月22日~26日、超党派の若手議員団で訪中。自民党からは林芳正参議院議員、後藤田正純代議士、鶴保庸介参議院議員、民主党からは、あの長妻昭代議士と、公明党からは稲津久代議士、谷合正明参議院議員などが参加した。今回強く感じたことは、私たち自民党メンバーと今回の民主党メンバーとは、肌合いが異なり、考え方が全く違うことだ。民主党内には国益を戦略的に考える、いわゆる保守のメンバーもいるが、やはり全く異なる思考の人たちも多いのである。

2.今回は、胡錦濤主席、温家宝首相の次の世代、即ち第5世代の指導者の一人と言われている、李源潮組織部長(59才:写真①、②)、そして重鎮の唐家セン元外相と、日中関係や中国経済について意見交換を行った。全体として、経済発展に裏づけされた自信、余裕が随所に感じられる会談であった。時に尖閣諸島や(先日発表された)防衛大綱を巡って議論の応酬もあったが、非公式な超党派の若手議員団の訪問ということもあり、比較的落ち着いた雰囲気の中での意見交換であった。

3.北京も毎回訪れる度に、発展の速さに驚く。特に北京市内の自動車が毎日2000~3000台増えており、即ち年間で70万~100万台のペースで増加しているのである。来年には中国全体で自動車販売台数が年間2000万台にも達するというのもあながち的はずれではないのである。
 しかし、この発展ぶりは、今回訪れた、内モンゴルのフフホト市、湖南省の長沙市でさらに驚くこととなる(後述)。

4.北京では、中国人民銀行のスポークスマン胡暁煉副総裁(52才:)と北京大学・国家発展研究院の姚洋副院長とも中国経済の動向、人民元問題等についても意見交換を行った。
特に、姚洋副院長との話は大変刺激的であった。姚氏は論文「北京コンセンサスの終わり」を発表し、民主化、改革派の論客として有名であるが、今回も、 人民元について、「5~10%引き上げは全く問題ない」と断言し、また、中国の民主化についても、①全国人民代表者大会(全人代)の役割を強化し、予算のチェックを行うべき、②党と政府の役割を分離すべき、等の提案も披露された。私から「堂々と党・政府への批判・意見を言われることに感銘を受けた。中国も変わる期待が持てて安心する反面、こんなにも堂々と批判を言っても大丈夫なのか」と聞くと、姚洋副院長からは、「米国政府関係者からも『監獄に入るのではないか』と聞かれた」ことを紹介しつつ、共産党の幹部とも話していると述べられた。中国政府の意見決定に影響力のある学者だけに、さらなる活躍に期待したい()。

5.24日(金)は朝5時半に起床し、北京から内モンゴルのフフホト市を日帰り。
片道1時間強の距離である。フフホト市では、胡錦涛主席の次の次の指導者の有力候補の一人と言われている、いわゆる第6世代の胡春華・内モンゴル自治区書記と懇談。胡書記は公開されている写真よりもずっと若く(現に私より一才年下!!)、昨年16.9%と高い成長を挙げている経済状況、今後の可能性についてよどみなく、かつ論理的に述べられた。中国のレアアースの生産の約60%を内モンゴルが占めていることから、私からは、レアアースは日中互恵関係の象徴であること(2010年9月26日ブログ参照)、また、中国第一の牛乳生産を誇っていることから、私の地元の酪農農業についても紹介し、意見交換を行った。大変親しみやすく、しかし言葉に無駄がなく話をされる(、⑥)。
次の次の主席が選ばれるのは12年後。胡春華氏59才、私60才。その頃お互いどういう立場で仕事をしているのだろうか。

6.ところで、内モンゴルのフフホト市は、想像と全く違っていた。砂漠や大草原を想像していたが、驚くほどの大都会である。もちろん、モンゴルのウランバートルよりも都会である。高層のオフィスビルが立ち並び、新しい高層マンションも建設ラッシュである()。さすが昨年16.9%、本年15%の経済成長だ。こうしたインフラ整備と資源高によって支えられた成長である。しかし渋滞はひどい。目抜き通りは常に大渋滞だ()。もちろん自転車もまだ多い。最近北京ではめっきり減った自転車であるが、マイナス10度でも平気で自転車に乗っている。

7.また、内モンゴルの乳業大手の「伊利」も訪問。この工場の自動化ぶりには驚かされた()。日本の企業の中国進出は、人件費の安さを活かすためであり、通常の多くの労働者を雇い入れる。しかし、中国の中堅・大手企業は、逆に完全自動化に近い状態で設備が立ち並ぶのである。中国企業の方が進んでいるようにすら思える。日本企業は意思決定が遅く、M&Aでも欧米や中国企業に敗れっぱなし、ともあちこちで聞いた。人口減少により日米国内のマーケットがどんどん少なくなる中で、中国を含めたアジア・世界の市場をどう切り拓くのか、企業経営者の意識改革も急がれる。

8.続いて、25日(土)には、湖南省長沙市を訪問。
ここでも、2年前に比べての発展ぶりに驚いた。目抜き通りでは、自動車の数の増加に圧倒される。地下鉄の工事を行っていることもあるが、大渋滞だ()。
ここ湖南省では、滋賀県のスーパー平和堂が進出し、成功している。熊本のラーメン店「味千」の看板も見えた。

9.湖南省では、周強書記と意見交換。2年前、そして、この5月の上海万博の開会式でもお会いしているが、少しスリムになった印象だ。湖南省経済を年率12%成長させており、先の内モンゴル自治区の胡春華書記と並んで第6世代の指導者候補である。私は神戸から進出する住友ゴムの工場の話を中心に、日中の経済関係について意見を交換した(、⑫)。将来の指導者候補者に地方のトップを経験させ、そして、 競わせながら、育てる。よく考えた仕組みだが、この二人は胡錦涛氏の共産党青年団(いわゆる共青団)の直属の後輩にあたり、胡氏に認められて出世してきているのである。今後、人事を巡って胡錦涛主席派?と保守派(対外強硬派)とが水面下で激しいやりとりをするに違いない。しかし、共産党一党独裁体制の下、国民不在の中で指導者が選ばれていくことには強い違和感を覚える。二人とも優れたリーダーには違いないが、いみじくも姚洋教授が示唆されてるとおり、今後どういう形で新しい民主化を進めていくのか、大国中国にとって大きな課題である。