BLOG
現旧社会主義国(中国・モンゴル・ロシア・インド)出張報告<その7>~ロシア①~
1.いよいよ初めてのロシアである。モンゴル・ウランバートルからアエロフロート(ロシアの航空会社)に乗り、途中、遠くに世界一透明なバイカル湖を眺めながら、約6時間。スチュワーデスさんたちは、概して愛想が悪く、料理も「量で勝負」という感じで、機体も古いし、大丈夫かな、と思っているうちに、無事モスクワに着いた。
2.ところが、市内に入るのに、大渋滞である。昔のバンコクのようである。聞いてみると「ここより渋滞がひどいのは、世界中でエジプトのカイロくらい」と称されるとのことである。何しろ、2年ほど前、中川・経済産業大臣(当時)が帰国する際に、大渋滞で、飛行機に乗り遅れたそうである。(そんなこともあって、大使館の人たちは、フライト時間に大変神経質になっている。私の場合も、モスクワ中心部を離れるときには、相当余裕を持って出発したため、空港でかなり時間があり、その時間を利用してこのレポートを書いている次第である。)
3.さて、私のロシア人に対する率直な印象は、「笑わない」「愛想がない」「自信たっぷり」である。モスクワに長く滞在する企業の方々の話だと、「白人で日本のことを蔑視していないのは、ロシア人だけですよ」とか、日本人の感覚とよく似ていて、例えばプレゼントを渡すとき「つまらないものですが・・」と言うそうである。確かに、旧知のイワノフ・外務省アジア局次長(前の在大阪総領事で、淡路島にも何度か来てくれた)は、きれいな日本語を話すし、「おおきに」(関西弁で「ありがとう」)とか冗談を言って笑わせてくれる。産業家・企業家同盟(日本の経団連に当たる)のヴィノグラードフ・日露経済協力委員会副代表も、日本滞在が長く、なごやかに日本語を話す。一方、石油資源のことを議論したTNK-BPのルミャンツェフ氏や、情報通信省のミロバンツェフ次官とは、テーマもテーマだけに、ずっと堅い会話が続いた。(もちろんそれぞれに日露の協力の提案もあった。)また、ルシコフ・モスクワ市長は、いつになく上機嫌で、天然ガスを活用した新燃料の話などで盛り上がった。ロシアの「二人で16キロの塩を食べる」と仲が良くなる、というジョークも披露してくれた。日露が今後仲良くなれるというメッセージである。市長とも、何度か会を重ねたことにより、このような変化が見られたのだろう。やはり、何度も会って、お互いの信頼を高めることが何より大事である。(ロシア人から見ると、日本人はいつもニコニコして、薄ら笑いを浮かべて、不気味に思っているのかも知れなし。)
4.おそらく、この数年のうちに、日本との貿易・日本からの投資ともに、飛躍的に増大するであろう。トヨタの輸入車「カムリ」は半年待ちであるし、日本ではいろいろ不祥事のあった三菱自動車も絶好調の販売である(組んだディーラーがいい企業であったようだ)。今後、自動車の投資を中心に、様々な分野でビジネスが拡大するであろう。もともとバイオなどの先端分野の研究者も多く、各国が囲い込みをする中で、日本のいくつかの企業も頑張っているし、某商社は、役員をモスクワに常駐させ、資源の権利獲得に本気になっている。
5.しかし、課題も多い。産業家・企業家同盟との意見交換の際にも、問題提起したが、第一に、法律の未整備。整備されていても、運用の不均一、すなわち、担当官の塩加減で、対応が全く変わるとのことである。そして、第二に、そのこととも密接に関連するが、腐敗の問題である。ロシア側は「日本企業はリスクを取らない」、「あまりに慎重だと、バスに乗り遅れるぞ」とか批判するが、他の国の企業は“袖の下”を駆使しているとのことである。特に、通関職員の給与が低く、通関に伴う「追加コスト」がかかる、との話もあった。したがって、この仕組みに慣れ親しんだ、フィンランドといった国が通関実務に強く、ロシアの消費財の輸入の約90%がフィンランドからであるとも言われている。日本企業の製品も多くがフィンランド経由で輸入されているとのことである。
6.また、物流が整備されておらず、そもそも大きな港もないし、道路網も十分に整備されていない。確かに、前述の渋滞もひどいし、一駅だけ乗った地下鉄も、昔のままである。最近になってようやくインフラ整備に資金(オイルマネー)を投入し始めた、とのことらしい。
7.いずれにしても、大きな可能性を秘めた国であることは間違いない。石油をはじめとする資源開発については、国家管理の色彩が極めて強くなっているが、例えば、世界最大規模とも言われる、北海近くのバレンツ海の「シュトックマン・ガス田」の開発についても、欧米企業は参入が認められそうであるし、そもそも、ドイツのシュレーダー前首相とプーチン大統領の個人的関係から、ドイツ企業は様々な面で優遇されているとも聞いた。日本としても、リスクがあるならあるで、貿易保険の仕組みなどを活用しながら、相当思い切ったコミット(約束)をすることも大事である。そして、何より政治がしっかりとしたパイプを築いていくことも大切である。森前総理とプーチン大統領の個人的な信頼関係は相当なものがあるが、さらにパイプを太いものにしていくためにも、若手で交流を深めていきたい。幸い、インドには、この一年で7回も訪問し、友人もたくさんできた。次は、このロシアである。
2.ところが、市内に入るのに、大渋滞である。昔のバンコクのようである。聞いてみると「ここより渋滞がひどいのは、世界中でエジプトのカイロくらい」と称されるとのことである。何しろ、2年ほど前、中川・経済産業大臣(当時)が帰国する際に、大渋滞で、飛行機に乗り遅れたそうである。(そんなこともあって、大使館の人たちは、フライト時間に大変神経質になっている。私の場合も、モスクワ中心部を離れるときには、相当余裕を持って出発したため、空港でかなり時間があり、その時間を利用してこのレポートを書いている次第である。)
3.さて、私のロシア人に対する率直な印象は、「笑わない」「愛想がない」「自信たっぷり」である。モスクワに長く滞在する企業の方々の話だと、「白人で日本のことを蔑視していないのは、ロシア人だけですよ」とか、日本人の感覚とよく似ていて、例えばプレゼントを渡すとき「つまらないものですが・・」と言うそうである。確かに、旧知のイワノフ・外務省アジア局次長(前の在大阪総領事で、淡路島にも何度か来てくれた)は、きれいな日本語を話すし、「おおきに」(関西弁で「ありがとう」)とか冗談を言って笑わせてくれる。産業家・企業家同盟(日本の経団連に当たる)のヴィノグラードフ・日露経済協力委員会副代表も、日本滞在が長く、なごやかに日本語を話す。一方、石油資源のことを議論したTNK-BPのルミャンツェフ氏や、情報通信省のミロバンツェフ次官とは、テーマもテーマだけに、ずっと堅い会話が続いた。(もちろんそれぞれに日露の協力の提案もあった。)また、ルシコフ・モスクワ市長は、いつになく上機嫌で、天然ガスを活用した新燃料の話などで盛り上がった。ロシアの「二人で16キロの塩を食べる」と仲が良くなる、というジョークも披露してくれた。日露が今後仲良くなれるというメッセージである。市長とも、何度か会を重ねたことにより、このような変化が見られたのだろう。やはり、何度も会って、お互いの信頼を高めることが何より大事である。(ロシア人から見ると、日本人はいつもニコニコして、薄ら笑いを浮かべて、不気味に思っているのかも知れなし。)
4.おそらく、この数年のうちに、日本との貿易・日本からの投資ともに、飛躍的に増大するであろう。トヨタの輸入車「カムリ」は半年待ちであるし、日本ではいろいろ不祥事のあった三菱自動車も絶好調の販売である(組んだディーラーがいい企業であったようだ)。今後、自動車の投資を中心に、様々な分野でビジネスが拡大するであろう。もともとバイオなどの先端分野の研究者も多く、各国が囲い込みをする中で、日本のいくつかの企業も頑張っているし、某商社は、役員をモスクワに常駐させ、資源の権利獲得に本気になっている。
5.しかし、課題も多い。産業家・企業家同盟との意見交換の際にも、問題提起したが、第一に、法律の未整備。整備されていても、運用の不均一、すなわち、担当官の塩加減で、対応が全く変わるとのことである。そして、第二に、そのこととも密接に関連するが、腐敗の問題である。ロシア側は「日本企業はリスクを取らない」、「あまりに慎重だと、バスに乗り遅れるぞ」とか批判するが、他の国の企業は“袖の下”を駆使しているとのことである。特に、通関職員の給与が低く、通関に伴う「追加コスト」がかかる、との話もあった。したがって、この仕組みに慣れ親しんだ、フィンランドといった国が通関実務に強く、ロシアの消費財の輸入の約90%がフィンランドからであるとも言われている。日本企業の製品も多くがフィンランド経由で輸入されているとのことである。
6.また、物流が整備されておらず、そもそも大きな港もないし、道路網も十分に整備されていない。確かに、前述の渋滞もひどいし、一駅だけ乗った地下鉄も、昔のままである。最近になってようやくインフラ整備に資金(オイルマネー)を投入し始めた、とのことらしい。
7.いずれにしても、大きな可能性を秘めた国であることは間違いない。石油をはじめとする資源開発については、国家管理の色彩が極めて強くなっているが、例えば、世界最大規模とも言われる、北海近くのバレンツ海の「シュトックマン・ガス田」の開発についても、欧米企業は参入が認められそうであるし、そもそも、ドイツのシュレーダー前首相とプーチン大統領の個人的関係から、ドイツ企業は様々な面で優遇されているとも聞いた。日本としても、リスクがあるならあるで、貿易保険の仕組みなどを活用しながら、相当思い切ったコミット(約束)をすることも大事である。そして、何より政治がしっかりとしたパイプを築いていくことも大切である。森前総理とプーチン大統領の個人的な信頼関係は相当なものがあるが、さらにパイプを太いものにしていくためにも、若手で交流を深めていきたい。幸い、インドには、この一年で7回も訪問し、友人もたくさんできた。次は、このロシアである。