1．この連休の前半は、アメリカ出張である。麻生外務大臣より一日早くアメリカ入りした。ワシントンDCの前にニューヨークに入り、14年ぶりのニューヨークで有意義な一日を過ごしたのである。まず、関西空港からロス・アンジェルス経由で（関空から東海岸への直行便がないとは情けない！）夜中に着いた翌日の30日、朝7時から弟の孔裕（よしひろ）と朝食を取った。弟は、昨年の選挙を手伝ってくれた後、ニューヨーク滞在になっており、久しぶりにいろんな話をした。やはり、アメリカで一人で暮らし仕事をすると、いろんな経験をしているようだ。一回り大きくなったように感じた。嬉しい限りである。ニューヨークは、14年前と違って、すっかり治安が良くなっており心配もない。夜中でも地下鉄に乗れるし、女性一人でも歩けるようである。ジュリアーニ前市長の手腕であり、共和党の大統領候補の一人に挙げられるゆえんである。

2．そして、経済産業省からニューヨークに勤務している後輩たちと、あの9．11のテロの場所「グラウンド・ゼロ」に行った。（後輩いわく）「ぼっこり空いていた」穴が埋められ基礎工事が始まっていた。被害を受けた隣のビルの一つはきれいに完成していたし、新しい街づくりがスタートしたようであるが、多くの人が祈りをささげているのを見ると、また、数千名もの亡くなった方々の名前を記したボードの所々に日本人の名前を見つけると胸が熱くなった。どんな思いで逃げたのだろうか。ロスからニューヨーク行きのアメリカン航空の便に乗り換えたとき、この飛行機は大丈夫だろうか、と思わずにいられなかったことを思い出した。それでも、力強く復活しようとしているアメリカの底力はさすがである。星条旗が空高くはためいていた。
（なお、このあと、ワシントンに滞在中の会議の合間に、9・11を描いた「ユナイテッド93」を見た。機内で勇敢にテロと戦った人たちのドラマである。やはり胸が熱くなった。）

3．その後は、元国務省の外交官であるアンダーソンさんとの面談である。アンダーソンさんは、アジアの専門家であり、マンスフィールド財団の理事をしている。私が、2004年9月に、同財団のプログラムでワシントンDCを訪問し、政策担当者と意見交換したことが縁で、先月東京でお会いした。その時、意気投合したものの、ゆっくり話をする時間がなかったため、今回ニューヨークのご自宅を訪問した次第である。美味しい（が、やや薄めのアメリカン）コーヒーをいただきながら、この11月のアメリカの中間選挙や来年の大統領選挙の予想など、ひとしきり盛り上がった。アパートメントからの眺めは素晴らしく、近くにニューヨーク大学がある学生の街でもあり、ここがニューヨークかと思えるほど落ちついた場所である。アジアについてのエッセイや絵を描きながら、ゆっくりと過ごしておられるアンダーソンさんにふさわしい、喧騒とは無縁の場所である。次回は、学生や芸術家が立ち寄るカフェにも寄りたい、と思いながら、再会を約束し、次は何とヤンキース・スタデイアムに向かった。

4．後輩たちは、アメリカを良く知っている私をどこに案内するかをあれこれ議論した後、最後の結論は、最もニューヨークらしい場所の一つ、「ヤンキースの試合を見に行こう」となったとのことである。あの松井選手のいるヤンキースである。実は、事前にこの提案を聞いたとき、あの森喜朗・前総理に相談して松井選手と会わしてもらおうかとも一瞬考えたが、今回麻生大臣にお供してワシントンに行く、ということに対して、ただでさえいろんな声がある中で、仕事だからと説明してきたのに、遊びに行くのか、といわれそうなので自制した次第である。でも、こうしてHPで告白してしまっているから同じことか！？

5．席は、ライト側ポール際の三階席で、えらく遠い席だなあ、と後輩たちにこぼしていたが、実際に行ってみると、どうしてどうして、上から見下ろす中々迫力ある席である（後に、大リーグ通の加藤良三・在米大使に話をすると「あそこは“通”の行く席ですよ」と言ってくれた。お世辞でも嬉しかった。きっと大使は、いつもバックネット裏の最高に高い席で観戦しているのだろうが）。残念ながら、この日は松井のホームランは飛んで来なかった（どころかヒットすら見れなかった）。日本と違って“鳴り物”は禁止されているものの、一球ごとに音楽が流れみんなで手拍子をする。なんとも言えない一体感を味わった。これが大リーグの醍醐味なのだろう。

6．さあ、いよいよワシントンDCである。たまたま出張中の同期の赤石・経産省米州課長と、同じ飛行機で大国アメリカの首都に向かった。仕事モードに切り替えである。