BLOG

日本航空(JAL)の再建について。
1.日本航空(JAL)の再建問題について考えたい。最終的に、「企業再生支援機構」の支援を得て、「法的整理」を行うこととなった。この機構の3000億円の出資と、日本政策投資銀行の融資と合わせて、1兆円に近い資金が日航(JAL)に投入される。しかし、この決定には、大いに問題がある。

2.まず第一に、そもそも「企業再生支援機構」は、政府と地方銀行が出資しており、本来、地方の中堅企業を再生することを主眼としているにもかかわらず、想定されていなかったJALに多くの資金が使われることとなってしまう。さらに、このJALの新CEOに就任した稲森和夫氏が大株主であるPHS事業の「ウィルコム」にも「企業再生支援機構」の資金が使われることとなり、結局大半の資金がこの2社に使われることとなりそうだ。何らかの政治的な裏取引があるのでは、ともささやかれている。

3.次に、前原大臣は、JALについて「法的整理はしない」との発言をしていたことだ。この発言により安心して株式を保有し続けた株主も多いと思う。それが100%原資で紙クズとなったのである。この政府による“風説の流布”的な発言も問題視しなければならない。

4.しかし、最も重要な論点は、「企業再生支援機構」が支援する条件として、3年間で再生の出口を見つけることとされているのに対して、現時点でJAL再生の出口戦略が3年間では全く見込めていないことである。JALは、現在でも毎日20億円もの赤字をたれ流しているとの報道もあり、そうだとすれば、半年で数千億円の赤字となり、あっという間に政府資金を使い切ってしまう。どういう出口戦略を考えているのか、是非議論したい。

5.ところで、一部に、自民党政権時代に、地方の族議員が地元の空港に無理矢理JALを飛ばしてきたことのツケが来ている、との批判もあるが、実は、国内線は黒字であり、国際線が大きな赤字となっているのである。国際線は世界的に経営が厳しく、世界各国の有力航空会社でも一社のみでは運営が厳しい状況である。このため、各社とも他国の航空会社とアライアンス(連携、即ち共同での運航)を広げ、コスト削減に努力している。残念ながら、JALは、このアライアンスの構築に出遅れたことが国際線の経営悪化の大きな要因となっているのである。JALは、いわば“国策会社”的な存在との自負があり、何かあれば最後は「政府が助けてくれる」との安易な思いが歴代の経営陣にあったのではないか、と思われる。この“日の丸親方”的体質こそが今回の破綻を招いたのである。

6.さらに、8つもの労働組合があり、これまでのコスト削減に抵抗してきたことも大きな要因である。新生JALは4年以内に1万5700人の削減を打ち出しているが、強い力を持つ労働組合をきちんと説得できるのか、この点も大きなポイントである。

7.いずれにしても、国民の血税は有効に使われなければならない。運航が維持され、将来、再上場等によりプラスになって返ってくるなら、納得できるが、その出口が見えずに巨額の税金を投入することは許されない。徹底的な体質改善とともに、出口戦略をしっかりと議論したい。