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「金融危機に対応する!」
1.株価の急落が止まらない。この週末、米国ワシントンでG7(先進7ヶ国)財務大臣会合が開かれ、各国が協調して強力な措置をとることを確認したが、一方で、市場の予想の範囲内で具体的措置の内容に欠ける、との批判も聞こえてくる。
特に、米国においては、金融機関への資本注入をためらうべきではなく、そのためには、①各金融機関の不良資産の規模を早急に確定することが必要であり、注入時期などを明確にすることが求められる。②また、税金を投入する以上、金融機関の経営者の責任も追及するべきである。何十億という報酬を得てきているとすれば、私財の拠出も含めて追及すべきである。

2.もとはと言えば、米国の低所得者層が住宅を購入できるようにと、様々な融資のメニューを用意したのが発端である。いわゆる「サブプライムローン」である。この発想自体は悪くない。金融の知恵や最新技術を駆使して、低所得の方々にも住宅を持てるようにしようとしたのである。

3.しかし、ここには甘い罠があった。そもそも、低所得の人たちが何年後から先に利子が急激に上昇するような融資の返済に対応していくのは、かなりの困難を伴う。即ち、「ハイリスク」な(危険性の高い)金融商品(融資)であり、そのリスクを幅広く分散するためにも、その分「ハイリターン」な金融商品として、次から次へと証券化し、様々な金融商品として派生させ全世界にバラまいたのである。
他方、オイルマネーをはじめとする新興マネーは、ヨーロッパの金融機関を中心に運用されてきたが、そのヨーロッパでは、米国に比べて金融商品のメニューが少なく、米国発のこの「サブプライムローン」から派生した「ハイリスク・ハイリターン」の金融商品に投資をしたのである。したがって、ヨーロッパはもちろん、新興国においても、ダメージは大きなものがある。

4.結局、今回の問題の背景は、こうした行き過ぎた「マネーゲーム」なのである。そして、この金融破綻の影響が我が国にも及んでいる。日本の大手金融機関はあのバブル崩壊を経験し、金融庁の厳しい(時には、厳しすぎる)指導のもと、経営の健全化に努めてきており、今回のサブプライムローン問題の影響はそれほど大きくない。しかし、地方の金融機関においては、地方では融資先・運用先が少ないため、こうした金融商品に手を出しているところも少なからずあるのではないか、と言われている。こうした状況を踏まえ、万が一に備えて、地方金融の安定化のための法律を準備しておくことも大切である。

5.また、米国での自動車販売が30%近い減少となるなど、実態経済への影響も大きく出始めている。自動車、電気など、輸出主導で景況回復してきた大手企業の関連や下請けの中小企業の資金繰りを支えていかなければならない。幸い、(衆議院では)民主党も賛成した補正予算案は今週にも成立する見込みであるが、保証協会による無担保無保証の6兆円分の保証枠の新設、日本政策金融公庫による無担保無保証の融資枠(3兆円)の創設を盛り込んでいる。細心の注意を払い、経済の安定、生活の安心につなげなければならない。

6.なお、今回の金融危機の原因となった行き過ぎた「マネーゲーム」については、規制も含めた対応を考えなければならない。例えば、国際的に協調して、為替取引などに「国際連帯税(仮称)」を課税することなど、検討に値すると思う。世界中の為替取引は年間770兆ドルだから、0.005%の税を課せば、税収は341億ドル(約3兆4100億円)となる。これを、温暖化対策や世界の貧しい子供の医療・教育に充てれば、一石二鳥である。世界が協調して、行き過ぎたマネーゲームを抑制していく枠組みを構築すべきときである。

7.そして、国内では、こうしたマネーゲームに惑わされることなく、真面目にこつこつ働く人が報われる仕組みをつくっていかなければならない。年金、福祉、医療といった社会保障はもちろん、労働に対して適正な対価となるよう、例えば正規、非正規問わず「同一労働・同一賃金の原則」も徹底していくことが必要である。
さらに、何より、若者や子供たちが、「楽して金を儲けよう」とか、「人を騙してでも、自分だけ良ければいい」といった風潮に染まることなく、健全な「職業観」を持つように教育もしっかりしなければならない。そして、地域のお祭りやコミュニティ活動を大切にして、子供たちが健全な個性と公共心を持って育つよう、不断の努力が必要である。心して頑張っていきたい。