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日本の強みと人づくり
1.時代は今、大きく変革の時を迎えている。小泉構造改革は、戦後日本の経済成長を成功させた日本の仕組み、制度が時代に合わなくなったとして、これを破壊しようとするものである。確かに政・官・財が密接に結びついて、時に"癒着"し、皆がハッピーになることができたわけであるが、今やこのシステムに適用しなくなっている。すなわち、"政"は無党派が半数を超える今、特定の業界の応援だけでは選挙に勝てないし、"官"の行動は倫理的に厳しい制約を受けるようになった。また、"財"も楽天、ソフトバンクなどの振興企業の存在感が極めて大きくなり、政治と一定の距離を持つ企業が増えている。(この意味で「政官財」連携の象徴的なとも言える最後の"行事"が「自民党税制調査会」(いわゆる"党税調")の年末の税制決定の仕組みである。)

2.しかし、壊した後の行く末はどのような社会であろうか。金融システムの行革・自由化など様々な規制緩和を見ていると、何となく「アメリカ型」の社会を目指していると勘違いされることが多いが、これは正しくない。やはり日本の良さ・強みをしっかりと維持していくことが大事である。

3.「モノづくり」で日本比較をしてみるとよくわかる。パソコンはアメリカが強く、自動車は日本が強い。何故か?パソコンは、インターネット上でその部品について一定の規格をのせて公募すれば、世界中から安い部品をいくらでも集めることができ、それらを組み合わせることによって完成する。即ち、アメリカはデジタル的な「組み合わせ」の技術に優れているのである(極めて「デジタル」な発想である、)。一方、車については、例えばトヨタの高級車のセルシオのあの「ズ・・・・」とくる滑らかな加速感は単なる部品の組み合わせだけでは生み出せない。タイヤ、シャフト、バネ、シートなどの部品メーカーと長年の信頼関係に基づき共に開発し続けることによって生み出されるのである。いわば、アナログ的な「すり合わせ」の技術に優れているのである。

4.したがって、日本の企業がアメリカの企業を真似て、合理性・効率性ばかり求めることは危険である。例えば、日産はゴーン改革の一環で部品メーカーの数をしぼった。鉄鋼メーカーも例外でなく、取引業者の数が減らされたが、そのせいで、最近の中国の需要急増の中での品不足に対応し切れなかったことは記憶に新しい。また、今後どのような新車を開発していくのかも注目である。やはり、日本社会においては、アナログ的ではあるが、人間関係を重視したり、一人一人や一企業一企業ではなく、何人か何社か集まって知恵を出し合い協働することが大切なのである。

5.この意味で、戦後の教育システムもアメリカ的であり、自由や個を重視しすぎていることは否定できない。もちろん、戦前の反省に立ち、「発言表現できる自由」や、一人一人が組織に頼らず、自分の考えを「主張」することも大切であることは言うまでもないが、本来日本の良さ、強みであるはずの「公」に対する気持ちや力を合わせることの大切さが軽視されてきてしまっている。みんなで力を合わせて物事を実現することの大切さや喜びを忘れてしまっているのである。

6.私の地元、明石や淡路島では、毎年、春祭りや秋祭りで、御輿(だんじり)が出る。茶髪にピアスの若者も参加して、御輿をかついでいる。私もそんな若者たちに混じってだんじりをかつぐのが恒例である。その茶髪の若者たちはひょっとすると先輩たちに云われていやいやながら参加しているかもしれないが、一人ではびくともしない1トンもの御輿が、30人、40人で呼吸よく力を合わせればきれいに上がる。本人は意識をしていないに違いないが、皆で力を合わせれば大きなことができることの体験は大事である。ラグビーの「one for all,all for one」(一人は皆のために、皆は一人のために)に通ずるものが感じられる。

7.以上、とりとめもなく書いてきたが、今まさに戦後60年の仕組みを一旦壊し、新しい時代にふさわしい社会・経済の仕組みを創ることである。今こそ本来日本の社会や文化が有している強さ、良さをもう一度見つめ直すことが大事である。


衆議院議員 西村やすとし