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郵政民営化についての私の考え方
1. 「郵政民営化」は、小泉総理によれば「改革の本丸」とされる。一方で、私の後援会の会合などで「今の郵便局に不満がありますか」と聞いてみると、約8割の人が「不満はない」と答える。一体、今の制度のどこに問題があるのか、何をすべきなのか、私なりの考えを述べてみたい。
2. 最大の問題は、郵政3事業のうち郵貯、簡保に集まっている350兆円の使い途(出口)である。すなわち、これまで、特殊法人をはじめ多くの無駄な事業に流れていたことである。このことが日本の金融システム全体を歪めてきたのであり、民営化論の一つの大きな根拠となっているのである。(なお、このことについて、郵便局の方々に責任はない。)
3.一方、郵便事業については、日本全国津々浦々どこへでも均一料金で届けてくれる。このいわゆる「ユニバーサル・サービス」は今後とも維持すべきであり、このことについての反対意見はほとんどないのが実情である。
4.以上のことを踏まえ、閣議決定された政府案が提案されているわけであるが、今後の制度設計に当たって何点かの論点を指摘したい。
①現在の郵政公社を4つの事業会社、即ち、「郵便会社」、「郵貯会社」、「簡保会社」、「窓口ネットワーク会社」と、これらを総括する「持株会社」に分けることとしているが、最大の課題は地域に拠点を置く各事業の窓口となる「窓口ネットワーク会社」の経営が成り立つかどうかである。この点、「ユニバーサル・サービス」の維持のためにも、全国の(特に地方、田舎の)郵便局が存続するように制度設計をすべきである。(もちろんよく指摘されるように、東京、大阪など大都市部の狭い範囲に郵便局が近接しているところについては、再編が必要である。)
②一方、「郵貯会社」、「簡保会社」については、日本の金融システムを歪めてきたとの観点から、民間との「イコール・フィッティング」(対策な競争条件)とするため、1)新規の契約については政府保証をなくす、2)所要の税金を納める、3)預金保険機構に加入する、等所要の措置を取るとともに、逆に制約となっている1000万円の限度額をなくすことも必要である。
③そして、既存契約分と新規契約分の勘定を分けた上で、1)優遇条件がなくなる中で、新規契約をどう増やしていくか、2)そしてその資金をどう運用するのか、の課題がある。これらの課題をクリアしないと、そもそも「窓口ネットワーク会社」の存続自体が極めて難しくなることも理解しておかなければならない。
私の現段階での考え(アイデア)は、
1)「郵貯会社」、「簡保会社」においては、外資系金融機関からも含め、大胆に人材を採用し、魅力ある金融商品を提供する。
2)運用については、大半を安定的な運用とする必要があり、また一方で、今後借り換え・利払いのために増加が予測される国債発行の受け皿となる国家的要請もあり、引き続きやはり国債・地方債での運用を基本とすべきである。
3)また、住宅ローンなど融資事業については、地域密着型の金融機関(地銀、信金、信組)に対する民業圧迫の懸念もあり、当面行われないこととするのがよいのではないか。(もし、融資事業を行うこととするなら、地域分割し、地場の金融機関との統合も視野に入れるべきである。)他方、地域の金融機関が保有している中小企業向け債権を100社、200社の単位で買い取り、即ち100~200億円くらいの規模で証券化し、投資家に販売する業務を行ったり、そのリスクの低い部分を引き受けたりする事業は検討に値すると思う。
4)さらに、運用の一部は投資信託などを通じて株式市場に流入すべきであるし(仮に1%として3.5兆円もの金額)、また、民間の投資ファンドに委託することにより、ベンチャー企業などへの「リスクマネー」ともなるよう、制度設計できないものかと思う。(例えば10億円単位ずつ何社かで運用を競争させることも一案だと思う。)
④また、これらの新会社の方々の身分については、「窓口ネットワーク会社」の方々は「裁判所の特別送達」等の公的業務を扱うことから「準公務員」・「みなし公務員」的な身分を保障し、他の事業会社の方々については民間企業と同様とするのが適当ではないか。
5.以上、現段階での私なりの考えを述べたが、政府として、「何故、郵政公社ではできないか」「何故、民営化を急ぐのか」をしっかり説明することが大事である。上述のとおり、「金融システムの健全化」のために民営化の議論(特に「出口」の議論)が必要なのである。多くの国民は、現在の郵便局のシステムに不満を持っていないのであり、「郵便局で各種のチケットが買えるようになる」とか「海外に郵便を送るのに、外国の企業ではなく日本の郵便局にやってもらった方がいい」とかの説明では国民は納得しないし、むしろ「そんなことは望んでいない」との声も聞こえてきそうである。結果的に、そのような利便性が上がったり、事業の拡大の効果もあるかもしれないが、本質的な話ではない。しっかりと「本質」を議論・説明することが必要である。
(最後に、余談であるが、よくマスコミの方から「民営化に賛成ですか、反対ですか」と聞かれる。「郵貯・簡保の資金を公的管理から切り離し、民間との競争関係の中に置く」という観点からは「賛成」であるが、「全国の郵便局を『効率性』の観点(即ち民間企業の発想)のみでその存続を判断する」という視点に立つものとすれば、絶対に「反対」である。このよ
うに考えると、おのずから改革の道筋が見えてくるように思う。)
衆議院議員 西村やすとし
2. 最大の問題は、郵政3事業のうち郵貯、簡保に集まっている350兆円の使い途(出口)である。すなわち、これまで、特殊法人をはじめ多くの無駄な事業に流れていたことである。このことが日本の金融システム全体を歪めてきたのであり、民営化論の一つの大きな根拠となっているのである。(なお、このことについて、郵便局の方々に責任はない。)
3.一方、郵便事業については、日本全国津々浦々どこへでも均一料金で届けてくれる。このいわゆる「ユニバーサル・サービス」は今後とも維持すべきであり、このことについての反対意見はほとんどないのが実情である。
4.以上のことを踏まえ、閣議決定された政府案が提案されているわけであるが、今後の制度設計に当たって何点かの論点を指摘したい。
①現在の郵政公社を4つの事業会社、即ち、「郵便会社」、「郵貯会社」、「簡保会社」、「窓口ネットワーク会社」と、これらを総括する「持株会社」に分けることとしているが、最大の課題は地域に拠点を置く各事業の窓口となる「窓口ネットワーク会社」の経営が成り立つかどうかである。この点、「ユニバーサル・サービス」の維持のためにも、全国の(特に地方、田舎の)郵便局が存続するように制度設計をすべきである。(もちろんよく指摘されるように、東京、大阪など大都市部の狭い範囲に郵便局が近接しているところについては、再編が必要である。)
②一方、「郵貯会社」、「簡保会社」については、日本の金融システムを歪めてきたとの観点から、民間との「イコール・フィッティング」(対策な競争条件)とするため、1)新規の契約については政府保証をなくす、2)所要の税金を納める、3)預金保険機構に加入する、等所要の措置を取るとともに、逆に制約となっている1000万円の限度額をなくすことも必要である。
③そして、既存契約分と新規契約分の勘定を分けた上で、1)優遇条件がなくなる中で、新規契約をどう増やしていくか、2)そしてその資金をどう運用するのか、の課題がある。これらの課題をクリアしないと、そもそも「窓口ネットワーク会社」の存続自体が極めて難しくなることも理解しておかなければならない。
私の現段階での考え(アイデア)は、
1)「郵貯会社」、「簡保会社」においては、外資系金融機関からも含め、大胆に人材を採用し、魅力ある金融商品を提供する。
2)運用については、大半を安定的な運用とする必要があり、また一方で、今後借り換え・利払いのために増加が予測される国債発行の受け皿となる国家的要請もあり、引き続きやはり国債・地方債での運用を基本とすべきである。
3)また、住宅ローンなど融資事業については、地域密着型の金融機関(地銀、信金、信組)に対する民業圧迫の懸念もあり、当面行われないこととするのがよいのではないか。(もし、融資事業を行うこととするなら、地域分割し、地場の金融機関との統合も視野に入れるべきである。)他方、地域の金融機関が保有している中小企業向け債権を100社、200社の単位で買い取り、即ち100~200億円くらいの規模で証券化し、投資家に販売する業務を行ったり、そのリスクの低い部分を引き受けたりする事業は検討に値すると思う。
4)さらに、運用の一部は投資信託などを通じて株式市場に流入すべきであるし(仮に1%として3.5兆円もの金額)、また、民間の投資ファンドに委託することにより、ベンチャー企業などへの「リスクマネー」ともなるよう、制度設計できないものかと思う。(例えば10億円単位ずつ何社かで運用を競争させることも一案だと思う。)
④また、これらの新会社の方々の身分については、「窓口ネットワーク会社」の方々は「裁判所の特別送達」等の公的業務を扱うことから「準公務員」・「みなし公務員」的な身分を保障し、他の事業会社の方々については民間企業と同様とするのが適当ではないか。
5.以上、現段階での私なりの考えを述べたが、政府として、「何故、郵政公社ではできないか」「何故、民営化を急ぐのか」をしっかり説明することが大事である。上述のとおり、「金融システムの健全化」のために民営化の議論(特に「出口」の議論)が必要なのである。多くの国民は、現在の郵便局のシステムに不満を持っていないのであり、「郵便局で各種のチケットが買えるようになる」とか「海外に郵便を送るのに、外国の企業ではなく日本の郵便局にやってもらった方がいい」とかの説明では国民は納得しないし、むしろ「そんなことは望んでいない」との声も聞こえてきそうである。結果的に、そのような利便性が上がったり、事業の拡大の効果もあるかもしれないが、本質的な話ではない。しっかりと「本質」を議論・説明することが必要である。
(最後に、余談であるが、よくマスコミの方から「民営化に賛成ですか、反対ですか」と聞かれる。「郵貯・簡保の資金を公的管理から切り離し、民間との競争関係の中に置く」という観点からは「賛成」であるが、「全国の郵便局を『効率性』の観点(即ち民間企業の発想)のみでその存続を判断する」という視点に立つものとすれば、絶対に「反対」である。このよ
うに考えると、おのずから改革の道筋が見えてくるように思う。)
衆議院議員 西村やすとし