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アジアの経済統合を目指して~日本の外交の基軸とは?~<国会レポート(20)>
1. 連日、FTA(自由貿易協定)交渉に関連する会議が開かれ、その議論に参加している。そしてその場では、多くの農林系議員から「日本の農業が崩壊する。自動車を売るために農業を捨てるのか」との強烈な反対意見が出されている。

2. この考え方もよくわかる。私自身、選挙区に、淡路島があり、農業・水産業は大事な基幹産業である。明石も同じである。特に小選挙区で33もの漁業組合がある選挙区には他になく、仮に韓国から安いノリが大量に輸入されると、地元の漁業は壊滅状態になる、したがって、主張すべき点は主張しなければならないのはもちろんである。

3. ここで、アジア経済について、貿易の相互依存度などの総合度を調べてみると、統合された(ユーロという統一通貨を使っている)EUに比べアジア経済の方がはるかに統合度は高い。このデータだけを見るとアジアもEUのように統合されても不思議はないが、EUの国々に比べ、アジアの国々は経済格差が大きいという難しい事情があるのに加え、EUは「ドイツとフランスが2度と戦争はしない」という歴史的な合意ができたことが大きい。そう考えると、アジアの経済統合の行方は、日本の中国との2つの大国の関係がどうなるかにかかっていると言える。

4. この点、中国は既にアーリーハーベストという形でアセアン諸国と緩やかな貿易協定を締結しているし、さらに本格的な協定とすべく、各国と交渉を行っているところである。そして、我が国もこの動きに遅れることなく、各国と交渉を行っているところである。まずは、日本―アセアン―韓国で大きな枠組みの自由貿易協定を構成し、その上で中国と向かい合い、日本と中国がしっかりと手を結ぶことができれば、経済関係のみならず、安全保障も含めた政治統合も現実味を帯びてくる。

5. 別の視点から指摘したい。マイクロソフト社はウインドウズによりパソコンの分野で世界を席巻しているが、日本が強みを発揮し今回の景気回復のけん引役であるデジタル家電の分野への進出・戦略をねらっている。せっかく日本のデジタル家電を売っても、その心臓部分である基本ソフトの部分をウインドウズに独占されてはたまらない。もちろん競争であるから、優れたソフト、システムを築いた方が市場で勝つわけであり、やみくもにマイクロソフト社を敵対視する必要はないが、少なくともデジタル家電の世界で、またアジアの世界でしっかりと日本の国益を考え守らなければならない。

6. このような観点からは、日本・中国・韓国の3カ国で、リナックスベースの基本ソフト開発に合意したことの意義の意味は大きい。強力に推進したいものである。また、関連するが、日本がイランとの間でアザデガン油田の開発に合意したことの意味も大きい。米国からすれば、テロ国家の一つであるイランと手を結ぶことは面白くないのであろうが、アラブの国からみれば、「日本はアメリカと一体ではない」「アメリカの反対することでも日本はやるときにやる」という印象を持ったはずである。

7. もちろん、日米関係、とりわけ日米安保条約が、我が国外交の基軸であることに変わりがないが、今後、中国との関係も見据えたアジア統合戦略、そして、エネルギーの安全保障の観点からの中東戦略をしっかりと考えていかなければならない。時にはアメリカと対峙することもあり得るが、我が国の国益を考え、その実現に向けて、したたかな対応が必要である。


衆議院議員 西村やすとし