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米国出張報告
1.1月16日~18日、米国の首都・ワシントンD.C.を訪問し、政府関係者、議会関係者、有力シンクタンク関係者と、TPP、北朝鮮情勢、イラン情勢などについての意見交換を行った。ちなみに、今回は、TPPについての立場は異なるが、大親友の江藤拓代議士と一緒に訪米した(写真①)。

2.まず、TPP(環太平洋パートナーシップ)については、事実上の米国側交渉責任者のカトラーUSTR代表補、ホワイトハウスNSC(国家安全保障会議)のマツダ日本部長、クウィンNSCアジア経済部長、農務省のホルツマン長官補佐官他と、かなり突っ込んだ意見交換を行った。

3.特に、TPP交渉の責任者であるカトラーUSTR代表補()、そして農務省ホルツマン長官補佐官とは、かなりの激論となった。
まず、私から、TPPは、アジア太平洋地域の繁栄のために重要な取組みであるし、日米同盟の視点からも重要である、しかし、日本には農業・医療などセンシティブな分野があり、関税撤廃の例外なし、とか、医療制度の変更などは受け入れがたい、旨発言した。これに対し、カトラー氏からセンシティブ品目について、すべての品目は、テーブルの上に置き交渉の対象となる、これには、1)長期間にわたる関税削減(米韓では15~20年)、2)セーフガード(SG)、によって対応すべき、との説明であったので、私より、長期間、SGはわかるが、それ以外にも柔軟性(フレキシビリティ)はあるのか、と問うた。これに対して、カトラーUSTR代表補は、「”Tricky”な質問だ。目標はすべての品目の関税をゼロにすること。あとは交渉の中で議論する。」と言っていた。即ち、“柔軟性”の余地を示唆するような発言であった。
そして、大激論となったのは、米豪間のFTAで例外品目とされた砂糖、酪農製品についての取り扱いである。何と米国は、「このまま据え置く」、「再交渉しない」との方針で、事実上、例外品目とする方針なのである。これに対し、私からは「米国は除外品目を有しているのに、日本には認められないのであれば、不公平だ。日本の国会で受け入れられない」と質した。

4.また、日本国内で懸念が高まっている医療制度を巡る論点については、カトラー代表補は、「日本の国民皆保険制度についてとやかく言うつもりはない。米国のやり方を押しつけるつもりは全くない」旨明言した。米国には、医療保険に入っていない国民が数千万人もおり、収入(支払能力)がないと医療を受けられない制度となっている。このため、株式会社形態の医療機関が富裕層を優先して医療を提供しており、この米国流の仕組みを押しつけられ、日本の「国民皆保険制度」が崩壊するのではないか、との懸念が日本国内で強まっていたのである。それを払拭する発言であった。

5.また、TPPについての米国議会内の雰囲気について、下院議員と意見交換を行った。ラーセン下院議員(民主党/ワシントン州2区/米中WG共同議長)は「TPPに対して、民主党議員は85%反対、共和党議員は85%賛成」()、またパールマター下院議員(民主党/コロラド州7区/貿易小委)は、「TPPに対して、民主党は50%賛成、共和党は60%賛成。民主党議員には反対が多いがオバマ指示のため賛成が増える。逆に共和党は自由貿易派が多いが、TPPはオバマが進めているから反対が増える」()。結局、現在のところ、米国議会はTPPについて賛否半々というところか。

6.米国商工会議所のオバビー副会頭とも率直な意見交換を行った。商工会議所は、TPP推進の立場であるが、「例外措置はあり得る」との発言。「大切なのは、全体としてバランスが取れた合意になっていることである」とのことである。自動車業界、特にフォードが強烈に反対しているとのこと。私からは、米韓FTAで盛り込まれている自動車輸入の数値目標的な“枠”は受け入れられない旨強調した()。

7.また、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のマツダ日本部長、クウィン・アジア経済部長とも、TPP、北朝鮮情勢、台湾総統選挙などについて意見交換を行った()。

8.さらに、ブッシュ政権時の外交政策、特に対日政策についての中心的なメンバーであった、共和党のアーミテージ元国務副長官()、M・グリーン元NSCアジア上級部長(CSIS日本部長)()とも意見交換を行った。アーミテージ氏は、北朝鮮情勢について、核実験やミサイル発射の可能性について懸念を示された。さらに、オバマ政権のアジア政策について「最初の2年間、オバマ大統領は中国に対して幻想を抱いていた。それがようやく間違いだとわかり、現実的になってきた。同盟国・日本と連携する姿勢にそう違いはない。」との見立てである。大統領選挙で、共和党政権になれば、より日本を支援する、との声は多くの人から聞かされたが、オバマ大統領もアジアに重点を置いており、いずれにしても、日本の政策・姿勢が問われることになる。その期待に応えるためにも、こちら日本は一日も早く政権交代しなければならない。ちなみに、ロムニー氏の外交アドバイザーとなられたグリーン氏からは、「TPP交渉は、2~3年かかる。ロムニーはOECD加盟国間でFTAを構築する。当然TPPも推進」との話があった。この点も、しっかり対応しなければならないのである(なお、こうした意見交換の合間で、USJIで講演を行った(、その内容は2012年1月18日ブログ参照 )。