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欧州エネルギー政策視察~その②:ドイツ~
1.ドイツは何度も訪問しているが、(2008年10月23日)、東西統一後の首都ベルリンは初めての訪問である。政治都市だけに全体として堅苦しい雰囲気が漂うが、今回は観光する間もなく、滞在中ずっと政府関係者との意見聴取・交換を行った(写真①はミュラーBDEW(電事連)事務総長(元国務大臣)、右端は、エッツェル環境省再生可能エネルギー基本問題課担当課長)。

2.ドイツでは、Feed-in Tariff (FIT)、即ち「固定価格買取制度」により、太陽光発電の導入量は急速に増加した(、④は機内から見た太陽光発電施設)。2010年で1719万kWと、スペインの1759万kWに続いて多く、日本の362万kWをはるかにしのいでいる。この間ドイツの太陽光パネルメーカー・Qセルズ社も急成長し、世界中でシェアを増やしていった。ちなみにドイツにおける太陽光・風力などの再生可能エネルギーのシェアは2011年19%(日本は2009年約9%)で、これを2020年に35%(日本の目標は13%)まで増やそうという、極めて意欲的な目標であるが、2022年に原発17基を停止させようとするのであるから、当然と言えば当然の目標である。

3.太陽光について言えば、屋根用(ルーフ・トップ)と地上用、そして規模別と、キメ細かく価格決定している。例えば2009年の太陽光の買取価格は種類・規模に応じて21~28ユーロセント(23円~30円)/kWhである。投資家の利回りを7~8%と想定して買取価格が決められているとのことである。しかし、50%以上が安価な中国製の太陽光パネルとなるなど急激に価格が下がってきたため、基本は毎年9%ずつ自動的に下がる仕組みとなっているが、今では半年毎に価格設定を行っている。しかも、予定している導入量よりも多く導入された場合には、さらに価格が下がる仕組みを取り入れている。具体的には、1000MW多く導入される毎に、買取価格はさらに3%下がるのである。

4.また、風力については、陸上のものは現在9ユーロセント(約10円/kWh)であるが、8年間で4.87セントまで下がることになっており、ほぼ電力卸売市場の市場価格となり、タリフ(買取)は必要なくなる。他方、洋上は、12年間は15ユーロセント(約12円/kWh)となっているが、この期間を延ばしてほしいとの声も聞いた。いずれにしても今後は風力3分の2、太陽光3分の1くらいの割合で、風力を重視して増やしていくようだ(、⑥は機内から見た、ドイツの風力発電の様子)。

ちなみに、ドイツでは、この買取価格(タリフ)を法律で定めているが、今回の法改正は、原発停止の決定もあり、与野党スムーズにコンセンサスが作られたとのことである。

5.なお、ドイツの電力料金は、10年間で約15%上がっており、低所得者対策や、南北格差も課題となっている。特に、南のミュンヘンのあるバイエルン州では、売電により年間20億ユーロ(約2200億円)のプラスであるのに対し、北のベルリン州では、2.8億ユーロ(約300億円)のマイナスとなっている。

6.また、電力多消費型産業にはサーチャージの軽減措置が導入されており、現在では約1000社がその対象となり80%以上の軽減を受けている、との説明を受けた。

ちなみに太陽光パネルメーカーの話によると、今後は、ドイツ以外にイタリア(特にプーリア州)、英国、ベルギー、タイが市場として有望とのことである。

7.以上、今回、「再生可能エネルギー買取法案」の修正案を作成するに当たっては、このドイツの仕組み・経験が大いに参考になった。法律の施行の状況、即ち、再生可能エネルギーの導入の状況、電力料金の値上がりの状況、特に家計や経済活動への影響を十分に見ながら、今後も制度の見直しは必要であるが、政府原案より、より良い制度として、来年7月1日よりスターできることになったものと自負しているところである。