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米国ワシントンD.C.で日米同盟について講演。
1月17日現地時間17時から、米国の首都ワシントンD.C.において「アジア太平洋の平和と繁栄を支える日米同盟」とういうタイトルで、U.S.-Japan Research Instituteで講演(英語:原稿はこちら)しました(写真①、②、③、④)。その元の日本語の原稿は以下のとおりです。


「アジア太平洋の平和と繁栄を支える日米同盟」

1.皆さん、本日はUSJIで素晴らしい皆様の前でスピーチをする機会を頂き誠に光栄です。1991年から92年にかけて、メリーランド大学のSchool of Public Affairsに留学しており、College Parkで青春を過ごしたこと、また、当時、ちょうど湾岸戦争が起こり、自衛隊がまだ海外で活動できず、もどかしい思いをしたことなど、懐かしく思い出しながら、本日は、日米同盟の意義、重要性を中心に、日本の進むべき進路、果たすべき役割について、私の考えをお話したいと思う。

2.まず最初に、ポルトガル没落の話をしたい。ギリシャの話ではない。もちろんギリシャも大変な状況にあるが、まずお話するのは、1755年のポルトガル。当時海洋大国であったポルトガルを大地震が襲い、ポルトガルはこれをきっかけに衰退の道を歩み始めたのである。250年経った、2011年3月11日、日本をマグニチュード9.0の大地震が襲い、大津波とともに原発事故まで引き起こした。原発事故では一人も亡くなっていないが、1万6000人もの命を奪い、今なお、4千名近い方々が行方不明である。被害総額約2,350億$もの大災害となったのである。

3.さて、日本は、かつてのポルトガルのように没落していくのか。答えは、「否」。私は、日本が力強く復活することを確信している。しかし、実は、日本は今、その繁栄か没落かの大きな分岐点に立っているのである。

4.まず、この災害に際して、米国は「トモダチ作戦」として、2万人以上の兵士を被災地に派遣してくれた。このことは両国が培ってきた強固で緊密な関係を示した。また、アメリカ国民、アメリカの様々な組織から、様々な形の寄付が寄せられた。何より、このような大変な悲劇のまっただ中で、アメリカが日本と苦労を共にしてくれた。日本人はこのことを心から感謝し、長く記憶にとどめるだろう。日米同盟に、多くの日本国民が感謝し、その意義を再認識したところである。この場をお借りして、私からも心からの感謝を申し上げたい。

5.そもそも、第二次世界大戦で戦った米国と日本。その二つの国が戦後十数年で同盟関係を構築し、その後の50年にもわたってその関係を維持拡大してきている。文化も歴史も全て異質な二つの国がこれほどまでに深い同盟関係を結んでいるのは、世界史上も特筆すべきことではないか。

6.しかも、この同盟関係も冷戦時代と9.11以降では全くその重みが違う。日米同盟の価値が一段と大きくなっている。現実にテロが起こるからである。「抑止」に加えて、現実の事態への「対処」が必要となっているからである。その意味で、アメリカにとって、沖縄に海兵隊が駐留することの意味は大きい。アジアや中東に展開できる即応力の意味は極めて大きいのである。今般、オバマ大統領は豪州ダーウインへの海兵隊の駐留を発表した。確かに、中国や北朝鮮からのミサイルが届かないダーウインは極めて重要な拠点であるが、そうだとしても沖縄の地勢学的な重要性はその価値を失うものではないのである。

7.他方、日本にとってみても、沖縄に即応力のあるアメリカ海兵隊が存在することの抑止力は極めて大きい。日本の安全保障に大きな意味があるのである。このことを日本国民は良く理解する必要がある。沖縄の負担軽減は大切であるが、海兵隊には沖縄にいて頂きたいのである。

8.また、もともとは日本を再軍備させないための「日米同盟」、即ち、「日米同盟」は、日本をびんの中に閉じ込める“びんのふた”の役割を果たしたが、今や、日米同盟は、アジア太平洋地域で、平和を構築していくための重要なインフラとなっている。即ち、“悪者”、“悪い国”をびんに閉じ込める“新びんのふた”である。アセアンの国々も、歴史を乗り越えて、日本の積極的活動を期待しているのが実態であり、アジアの平和と繁栄のためにも、日本はこの期待に応えていかなくてはならないと考えている。

9.例えば、私は、外務大臣政務官の時に、米国のGPSを補完する準天頂衛星を日本が打ち上げることについて、米国政府に説明し、理解を得た。それまで日本は、宇宙については学術的な研究しか行ってこなかったが、2008年に、私が中心になって「宇宙基本法」を超党派で成立させ、衛星を安全保障にも活用できることとしたのである。もちろん、他国を侵略するためではなく、日本国憲法の範囲内で自国の安全を守るためである。そして、昨年GPSを補完する準天頂衛星第一号を打ち上げた。今後さらに3基を打ち上げる予定で、うまくいけば日本からアジア・オセアニアの上空を将来合計7基の準天頂衛星が飛び、米国GPSを補完する形で、地理空間情報を正確に測位するようになる。この準天頂衛星は、今回の大地震の復興にも活用されているが、今後、アジア地域において、災害対策や船舶の安全な航行などに活かされることになる。

10.つまり、日本として、これまでアメリカに大きく依存してきた、こうした宇宙の分野においても、自国の負担で、米国の仕組みを補完・強化しているのである。今後、宇宙のみならず、サイバーテロ対策、ミサイル防衛といった分野で、両国の協力関係が強化されるべきであり、それにより、アジア太平洋地域の安定性は大いに増大するものと考える。

11.この日米同盟強化の延長戦上で、「武器輸出三原則」の緩和が行われた。我が国では基本的に武器輸出が禁じられているが、ミサイル防衛など、日米の共同開発については、日本の技術を米国に輸出できることとしたのである。さらに、集団的自衛権の行使についても、私は認めるべきだと考えている。本来、憲法を改正して明確にその趣旨を規定することが望ましいが、それでは時間がかかりすぎる。現実の国際情勢は日々動いており、私は、一刻も早く、解釈の変更で「集団的自衛権の行使」を認めるべきだと考える。日米の同盟関係を強化することにつながるのである。他方、PKOなどで活動を共にしている欧州の国々とも関係を強化する観点から、一緒に活動する他国の人も守れるように、武器の使用基準を国際的基準にあったものに改めるべきである、とも考えている。

12.この文脈で、日米同盟を批判する人の中に、日本がアメリカの戦争に「巻き込まれる」という「巻き込まれ」論を主張する人がいるが、日米同盟は、平時において日本がアメリカに基地を提供・負担し、有事にはアメリカが防衛義務を負うというものである。むしろ、日本が攻撃された時に「アメリカを巻き込む」という「巻き込み」論なのである。日米同盟は、日本の安全保障にはなくてはならないのである。

13.なお、私が外務大臣政務官の時に、ソマリア沖のアデン湾での「海賊対処法」を制定し、日本の自衛隊が他国の船も海賊から守ることとし、武器の使用も緩和した。私は、これは、自衛隊の役割拡大の大きなステップだと考えている。昨年には、アフリカのジブチに歴史上初めて日本の自衛隊の海外基地が設置された。私がメリーランド大学に留学していた当時から考えると、正に隔世の感がある。画期的なことである。私は、世界の平和構築のために、こうした自衛隊の海外活動を積極的に行うべきだと考えており、日米同盟を基礎とした米国との連携とともに、欧州、NATOとの連携も強化すべきと考えている。

14.ちなみに、北朝鮮について、いくつかコメントしたい。第一に、中国は相当の決意で金正恩体制を安定させたいと考えている。北朝鮮の混乱・不安定化は中国への難民流入を引き起こすだろうし、何より、北が暴発すれば、米韓に北朝鮮が制圧され、北朝鮮が韓国に飲み込まれることになりかねない。中国は、そのことを強く恐れている。なお、金日成から金正日への移行時には、その2年後に反対派の反乱の動きがあった。現在は安定しているようだが、決して気をゆるめてはいけない、と考えているのだろう。第二に、北朝鮮は、米国大統領選挙において、オバマ再選を望んでいるだろう。二期目の大統領は成果や実績を求めるし、再選を考えてあちこちに配慮することもないため「組み易し」と考えているのではないか。現に、テロ国家指定の解除など、ブッシュ政権ですら二期目はかなり譲歩したように見える。民主党政権なら尚さらではないか。第三に、韓国大統領選では、朴槿惠(パククネ)大統領を望んでいるのではないか。朴氏は、保守派であるが、北朝鮮を訪問したことがある。保守派のリーダーだけに、彼女の行動を誰も反対しにくいからである。

15.経済分野に話題を変えたい。かつて私は経済産業省で、日米通商摩擦とその交渉を目の当たりにしてきた。今や、日米で角突きあわせて議論することは少なくなり、これまた隔世の感があるが、今、日本でTPP(環太平洋経済連携協定)を巡って大変な論争が行われている。私は、日本も早く交渉に参加すべきだと考えている推進派だが、ちなみに今回一緒に訪米した私の大親友・江藤拓代議士は、慎重な立場である。全く反対というわけではないが、時間があれば、後ほど少ししゃべってもらおうと考えている。先日は、民主党の反対派が数多くこのワシントンD.Cを訪問したとも聞いているが、停滞する日本経済浮上のための一つの契機として、また、アジア太平洋の発展のために、私は、TPPの役割は重要だと考えている。TPPが目指す、自由貿易や投資交渉の推進、知的財産の保護は、お互いの富を増やすことと確信している。世界の貿易・投資などのルールを決めるWTOが機能しなくなっている現状で、成熟した先進国の有志、即ち、米国、豪州、日本といった国々がそのモデルとなる新しいルールを作ることは極めて重要なのである。そして、こうした投資や知的財産保護のルールを、APEC、ASEAN 6などの場を通じて、将来その他の国々、つまり中国やロシアといった新興国にも遵守するよう求めていくことが大事なのである。私は、決して、TPPだけを推進すればいいと思っているわけではなく、TPPをベースに、APEC、ASEAN 6といった様々な枠組みで、アジア太平洋地域において、重層的に、競争的に、自由な貿易・投資の環境が築かれればいい、と考えている。TPPはその起爆剤になるのである。ちなみに、日本がTPPへの関心を示したことから、日本に全く振り向きもしなかったEUが日本とのEPAの交渉に関心を持ち、現在、SCOPING EXERCISEという事前協議を行なっている。まさに、日本が中心となって、アジア太平洋地域において、そして欧州との間で、重層的に自由経済圏が構築されつつあるのである。世界の経済の発展のためにも、日本は中心的な役割を果たしたいと思っている。

16.ただし、食料安全保障や医療保険制度に関わる分野では日本として譲れない一線もあることは是非認識してほしい。ちなみに、アメリカの農業の一軒当たりの耕地面積は日本の100倍、オーストラリアは1500倍だ。それでも、皆さんご存知で大好きな日本食に見られるように、日本は米国や豪州に負けない美味しい農作物を作る自信はある。しかし、いくら何でもあまりにも規模が違いすぎ、コストに差がありすぎる。これはアメリカと豪州を比較してもそうだ。仮に、日本が農作物輸入を自由化しても、豪州の農作物ばかり入ってくる可能性があることにも留意しなければならない。今回の訪米は、こうした日本の立場をしっかりと説明するとともに、米国の考えもよく伺い、日米が連携して、このTPP交渉がうまくいくようにしたいと考えている。

17.日本経済については、デフレ状況が続き、その上に超円高、原発事故によるエネルギーコストの上昇などが重なり、極めて厳しい状況にある。2011年の1~11月の日本貿易収支は300億$(約2.3兆円)近い赤字であり、原発の停止に伴う石油・LNG・石炭などの代替燃料のための海外への支払いが急増している。
 まずは、デフレ是正のための大胆な金融政策を実施すべきと考えているし、さらに、行き過ぎたドル安・ユーロ安是正のために、1987年に、かつて1985年のプラザ合意の後、ドル安が進み過ぎたことを是正するために日米欧が協調した「ルーブル合意」にちなんで21世紀の「新ルーブル合意」が必要だと考えている。
 また、エネルギーコストの上昇を抑えるために、米国には、是非「シェールガス」の日本への供給拡大をお願いしたいと考えている。

18.欧州債務危機については、先行きは極めて不透明である。そもそも、発展レベルの違う国と国の間のバランスは、通貨の変動によって調整されるわけだが、それを統一通貨にしてしまったために、おかしくなってしまった。後発の国は信頼の高いユーロによって、安く財政資金を調達できるようになり、“発展した”と勘違いを起こしたし、発展していたドイツなどは、安いユーロで域内にどんどん輸出を増やし、益々経済が拡大し、結果として、格差が拡大してしまったのである。したがって、どちらもいい思いをしたわけで、欧州の問題は欧州の中で解決してもらうのが筋である。ちなみに、ギリシャは、4人に1人が公務員、年金は50歳半ばからもらえ、現役時代の所得の90%ももらえると言う。ドイツ人が怒るのもわかる気がする。

19.しかしながら、欧州債務危機が長引くことは、世界経済にとって大きなマイナスである。日本は円高・ユーロ安に悩まされるし、中国は欧州向けの輸出が約2割もあり、その影響は大きい。かと言って、アメリカも国内経済が不安定な中で、大きな欧州支援ができるわけではないし、財政的には余裕のあるはずの中国も欧州支援には慎重になっている。これまで、中国は、アイスランド、ポルトガルなど言わば“一本づり”で財政支援してきたが、欧州全体での対中国政策について一定の効果があったとは言い難いし、また、昨年末北京で、面白いエピソードを聞いた。中国がEUにスクールバスの支援を発表した直後に、中国内で、スクールバスの事故が相次いだのである。どうも定員の2倍以上の児童を詰め込んで事故を起こしたらしく、ネット上では、他の国を支援する前に自国のスクールバスをきちんと整備しろ、との批判が渦巻き、炎上したとのことである。

20.そうだとすると、欧州を支援できるのは日本しかない。私は、日銀が6000億$(約50兆円)規模で外債購入のための基金を設けたらどうか、という考えに賛同している。欧州支援にもなるし、円高・ユーロ安是正にもなる。自民党の財務金融部会長として、政策の責任者として議員立法を含めて検討しているところである。

21.また、アジアをはじめ新興国から欧州の資金が急激に引き始めており、円高でもあることから、日本はできる限り、肩代わりできるようしていきたいと考えている。新興国経済の下支えをするとともに、この機会に、海外での資産、技術を取得し、日本国内の成長につなげていくべきだと考えている。

22.中国については、米国、日本、欧州、アジアの国々が分断されることなく、マルチの枠組みの中で連携し、しっかりと国際社会の一員としての責任、特に、もはや世界第2の経済大国としての責任を自覚し、果たしてもらうよう促していかなければならない。
 国内の格差など不安定さを内包しての発展であるだけに、中国国内統治の難しさはよく理解できるが、2カ国間での対話とともに、マルチの場での対話を重ねることが大切だと思う。

23.以上、長々と世界の平和と経済をめぐる状況と日本の果たすべき役割について、私の考えを述べてきたが、日米同盟が、9.11以降益々その役割が重要となってきており、世界の、特に、アジア太平洋地域の平和と繁栄のために極めて重要な基礎インフラとなっていることを強調したい。今後、日米でより緊密な連携が図られることを祈念して、私の話を締めくくりたい。ご清聴ありがとうございました。
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