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定額給付金を地域活性化に活かす
政府の経済政策の一つである「定額給付金」がすこぶる評判が悪い。私の地元の集会などで聞いてみても、約6~7割の方が「医療など他のことに使ってもらいたい」、「私はいらない」と言う。
それでは、この「定額給付金」を、多くの方々の要望通り、地域医療や福祉、子育て支援など、それぞれの地域で必要とされている事業に活かすことはできないものだろうか。もちろん、今回の経済対策では、国が行うべき医療対策や子育て支援策、雇用対策も盛り込んでいる。しかし、地域の実情に応じてこの「定額給付金」を活用できないものだろうか。「定額給付金」の意味、活かし方を考えてみたい。(私は現在、外務大臣政務官として麻生内閣の一員であるが、担当外のこの「定額給付金」について、一国会議員として考察してみたい。)
まず、この定額給付金への批判の中で、よく言われるのは、経済効果についての疑問である。「将来に対する不安があるから、もらっても貯蓄に回る」から、消費されず、経済効果が少ない、との批判である。この「定額給付金」は、1人当たり1万2千円で、子供や高齢者には2万円であるから、親子4人の家族で6万4千円の給付である。なお、今年度に限って第二子が3~5才の場合は、別途3万6千円の特別手当てが用意されているから、子育て世帯は10万円の給付となる。この金額を見て、そもそも「もらってもすぐに食べたり飲んだりであっと言う間に使ってしまう」との意見については、「消費してもらうこと」が狙いなのだから、飲食でも何でもすぐに消費に回してもらえれば、日本全体で2兆円もの需要拡大となり、経済活性化に寄与する。一方、貯蓄した場合はどうか。マクロ(日本全体)で考えて、仮に半分の約1兆円が銀行貯金に回るとしよう。銀行にとってはありがたい話である。株価や不動産価格が急落し、含み資産が少なくなっているところへ、この1兆円の貯金は大きい。信用効果により、5~10兆円程度の貸し出し増につなげることも可能となる。貸し渋りが批判される中、地域の中小企業にとってプラスになる話であり、経済効果はあるのである(政府からあらためて中小企業向けの貸し出し増について、強い要請を行うことも必要である)。
次に、「高所得者層には配る必要はない」との批判は、至極もっともであり、生活が厳しい低所得者層により手厚く給付されることが望ましい。このため、地域事情も勘案し、市町村毎に、所得制限を設けるかどうか判断を委ねる、との方針となっている。
しかし、現段階の案では、所得制限を行い配らなかった分は「国へ返す」こととなっているため、市町村は基本的には所得制限を行わないであろう。なぜなら、所得制限を行うには、正確な所得の把握など事務量が増えるし、どこで線を引くか、隣接する市町村と制限する所得額が異なる場合はどうするか、など悩みが増える上に、そもそも「国に返すくらいなら、全額配って地元で使ってもらった方が多少なりとも経済効果が期待できる」と判断するのが自然だからである。
したがって、今からでも可能なら、「市町村が所得制限をした場合には、余った金額は、市町村の裁量で自由に使える」こととすれば、多少事務が増えようとも、市町村は進んで所得制限を行うこととなる(もちろん、その場合に、余った資金の使途について、医療・福祉・子育て支援など一定の制限を加えても良い)。筆者もかねてより、このやり方を主張してきたし、できることなら市町村の財源となるよう引き続き努力したいと思う。
しかしながら、補正予算の検討・提出の時間的制約もあり、このようにならない場合には、どうしたら良いか。(次善の策ではあるが)ここからが、首長のアイデア、リーダーシップの見せどころであり、少し大げさ言えば地方主権を進める「試金石」となり得る話である。
即ち、市町村は、いったん全住民に全額給付した上で、「市民から寄付を募る」のである。特に、所得の高い層に対し、寄付を強く要請するのである。約6割の人たちが「いらない。他の事に使ってくれ」と言っているのだから、市町村が市民が望む魅力ある事業を提案できれば、必ず寄付が集まるはずである。
「地域医療を充実させる」でもいいし、「保育所の整備」でもいい。12月4日付け松沢成文神奈川県知事の言う「小学校の耐震化」でもいい。市町村毎に、首長が緊急に行うべき経済対策としてとして事業提案をし、寄付してもらえばいい。例えば、私の地元明石市は人口約30万人であり、総額約44億円の給付金を配ることとなる。仮に半分の人が寄付に応じてくれれば、約20億強の独自財源が生まれ、かなりの事業が実行できることとなる。明石市民病院でいなくなった産科の医師の確保に充てることもできる。
また、千葉県市川市が、住民税の1%を、指定するNPOの事業活動に充てるとのやり方を実施しているように、寄付する人の希望する事業に充てることも一案かもしれない。
いずれにしても、日本全体でマクロで考えた場合、仮に約半分の人が寄付をすれば、一時的にせよ、約1兆円の地方の独自財源が生まれるのである。
道路特定財源から地方への交付金を巡って大きな議論となっているが、国からの補助金として使途を定められるよりも、よっぽど使い勝手がいい独自財源となる。このように、約6割の人が「いらない。医療など他のことに使ってくれ」と望むこの「定額給付金」を、「寄付」を通じて、本当に地方が必要とする「地域医療」などの事業に回るように工夫ができるのではないか。即ち、寄付文化の定着も含めた地方主導のまちづくりへのきっかけへと変えることができるのではないか。
市町村が、地域地域で望まれている魅力ある事業案を提示することができるか、そして、本当に「いらない、他の事に使ってくれ」と主張する(考えている)6割の方々が、その思いの通りに寄付に応じてくれるのか、壮大な実験となる。せっかくの2兆円である。地域活性化にこの「定額給付金」が活きるように、そして、将来の地方主権につながるように、「チャンス」と考え、皆んなで知恵を出そうではないか。
それでは、この「定額給付金」を、多くの方々の要望通り、地域医療や福祉、子育て支援など、それぞれの地域で必要とされている事業に活かすことはできないものだろうか。もちろん、今回の経済対策では、国が行うべき医療対策や子育て支援策、雇用対策も盛り込んでいる。しかし、地域の実情に応じてこの「定額給付金」を活用できないものだろうか。「定額給付金」の意味、活かし方を考えてみたい。(私は現在、外務大臣政務官として麻生内閣の一員であるが、担当外のこの「定額給付金」について、一国会議員として考察してみたい。)
まず、この定額給付金への批判の中で、よく言われるのは、経済効果についての疑問である。「将来に対する不安があるから、もらっても貯蓄に回る」から、消費されず、経済効果が少ない、との批判である。この「定額給付金」は、1人当たり1万2千円で、子供や高齢者には2万円であるから、親子4人の家族で6万4千円の給付である。なお、今年度に限って第二子が3~5才の場合は、別途3万6千円の特別手当てが用意されているから、子育て世帯は10万円の給付となる。この金額を見て、そもそも「もらってもすぐに食べたり飲んだりであっと言う間に使ってしまう」との意見については、「消費してもらうこと」が狙いなのだから、飲食でも何でもすぐに消費に回してもらえれば、日本全体で2兆円もの需要拡大となり、経済活性化に寄与する。一方、貯蓄した場合はどうか。マクロ(日本全体)で考えて、仮に半分の約1兆円が銀行貯金に回るとしよう。銀行にとってはありがたい話である。株価や不動産価格が急落し、含み資産が少なくなっているところへ、この1兆円の貯金は大きい。信用効果により、5~10兆円程度の貸し出し増につなげることも可能となる。貸し渋りが批判される中、地域の中小企業にとってプラスになる話であり、経済効果はあるのである(政府からあらためて中小企業向けの貸し出し増について、強い要請を行うことも必要である)。
次に、「高所得者層には配る必要はない」との批判は、至極もっともであり、生活が厳しい低所得者層により手厚く給付されることが望ましい。このため、地域事情も勘案し、市町村毎に、所得制限を設けるかどうか判断を委ねる、との方針となっている。
しかし、現段階の案では、所得制限を行い配らなかった分は「国へ返す」こととなっているため、市町村は基本的には所得制限を行わないであろう。なぜなら、所得制限を行うには、正確な所得の把握など事務量が増えるし、どこで線を引くか、隣接する市町村と制限する所得額が異なる場合はどうするか、など悩みが増える上に、そもそも「国に返すくらいなら、全額配って地元で使ってもらった方が多少なりとも経済効果が期待できる」と判断するのが自然だからである。
したがって、今からでも可能なら、「市町村が所得制限をした場合には、余った金額は、市町村の裁量で自由に使える」こととすれば、多少事務が増えようとも、市町村は進んで所得制限を行うこととなる(もちろん、その場合に、余った資金の使途について、医療・福祉・子育て支援など一定の制限を加えても良い)。筆者もかねてより、このやり方を主張してきたし、できることなら市町村の財源となるよう引き続き努力したいと思う。
しかしながら、補正予算の検討・提出の時間的制約もあり、このようにならない場合には、どうしたら良いか。(次善の策ではあるが)ここからが、首長のアイデア、リーダーシップの見せどころであり、少し大げさ言えば地方主権を進める「試金石」となり得る話である。
即ち、市町村は、いったん全住民に全額給付した上で、「市民から寄付を募る」のである。特に、所得の高い層に対し、寄付を強く要請するのである。約6割の人たちが「いらない。他の事に使ってくれ」と言っているのだから、市町村が市民が望む魅力ある事業を提案できれば、必ず寄付が集まるはずである。
「地域医療を充実させる」でもいいし、「保育所の整備」でもいい。12月4日付け松沢成文神奈川県知事の言う「小学校の耐震化」でもいい。市町村毎に、首長が緊急に行うべき経済対策としてとして事業提案をし、寄付してもらえばいい。例えば、私の地元明石市は人口約30万人であり、総額約44億円の給付金を配ることとなる。仮に半分の人が寄付に応じてくれれば、約20億強の独自財源が生まれ、かなりの事業が実行できることとなる。明石市民病院でいなくなった産科の医師の確保に充てることもできる。
また、千葉県市川市が、住民税の1%を、指定するNPOの事業活動に充てるとのやり方を実施しているように、寄付する人の希望する事業に充てることも一案かもしれない。
いずれにしても、日本全体でマクロで考えた場合、仮に約半分の人が寄付をすれば、一時的にせよ、約1兆円の地方の独自財源が生まれるのである。
道路特定財源から地方への交付金を巡って大きな議論となっているが、国からの補助金として使途を定められるよりも、よっぽど使い勝手がいい独自財源となる。このように、約6割の人が「いらない。医療など他のことに使ってくれ」と望むこの「定額給付金」を、「寄付」を通じて、本当に地方が必要とする「地域医療」などの事業に回るように工夫ができるのではないか。即ち、寄付文化の定着も含めた地方主導のまちづくりへのきっかけへと変えることができるのではないか。
市町村が、地域地域で望まれている魅力ある事業案を提示することができるか、そして、本当に「いらない、他の事に使ってくれ」と主張する(考えている)6割の方々が、その思いの通りに寄付に応じてくれるのか、壮大な実験となる。せっかくの2兆円である。地域活性化にこの「定額給付金」が活きるように、そして、将来の地方主権につながるように、「チャンス」と考え、皆んなで知恵を出そうではないか。