BLOG

「日中韓次世代フォーラム」に参加して(詳細な感想)
1. 7月26日~8月5日「日中韓次世代リーダーズフォーラム」に参加して、韓国・ソウル、中国・北京から帰ってきました。このフォーラムは、日・中・韓の三カ国から、政治家・ビジネスマン・学者・ジャーナリスト・官僚の若手(各々次世代リーダー、40才前後)各5人計15人が集い、約2週間、行動を共にし、それぞれの都市で(日本は福岡で)フォーラム、セミナー、ディスカッションを開催しながら、日・中・韓の交流を深めるというプログラムです。私は日本の若手政治家代表として参加しました。歴史観など意見の対立もありましたが、朝から晩まで一緒に語り、笑い、ものすごく親しい仲間ができました。対話を重ねながら、未来志向で、信頼関係を築いていくことが大事だと改めて感じた次第です。


2. その中で、強く感じたことは、次のようなことです。

①韓国が"日本と中国の橋渡し役"になろうと大変積極的であり、「ナショナリズム(民族主義)」と「(アジアへの)グローバリズム」の両方の感情が奇妙な形で共存しているように感じました。特に日本との関係でも「過去のことを言わずに」「未来志向」で付き合っていきたい、との思いを強く感じた次第です。

②これと対照的なのが中国です。(私自身が面談した多くの中国の方々は・日本との(特に)経済関係の重要性も理解しており、あの騒ぎはごく一部の人たちの行動だと思いますが、)アジアカップ・サッカーに際してのあの「反日騒ぎ」です。中国と韓国の最大の違いは「民主化されているかどうか(選挙で自分たちの代表を選んでいるかどうか)」だという気がします。韓国の場合、自分たちの代表を選挙で選べるが故に、自分たちの考えを表現できる場があるわけですが、中国の人たちにはそんな場がありません。強制的な立ち退きに抗議する人が天安門広場で焼身自殺を図った、というような話も聞きます。自分たちの思いを体現できる場がないだけに、どこかに「ハケ口」を見つけようとします。すべての人が経済的に「昨日より今日」の方がよければ不満もたまらないでしょうが、経済成長が止まったり地域格差や立場による格差が大きくなったりすると、どこかで不満が爆発します。もちろん教育の影響もあるでしょうが、日本に対して、そのエネルギーが向かったような気がします。

③一方で、経済面では、中国は大きく変わってきてます。特に、北京がソフトウェア開発、半導体設計などIT関連産業の一大集積地になってきております。なんとハイテクリサーチパークの「中関村」に登録されているハイテク関連企業が8000社。なかでも、米国に留学し帰国した若い人たちがたくさんのベンチャー企業を生み出しています(彼らは、税制上の優遇措置の他、「一人っ子対策」を免除されています。優秀な人は何人子供を生んでもいいとのことで、何とも中国らしい政策です。)日本にこれほどソフト産業が集積している地域があるでしょうか。

④また、貿易面で見てみると、日・中・韓の相互依存度が大きく進み、EU内の統合度(相互依存度)と比べても変わらないくらいです。"切っても切れない"関係になっているわけです。FTA締結などにより、この関係をさらに深めお互いの信頼関係をつくることが、やがて感情面でわだかまりをも取り除くことにつながるのではないでしょうか。


3. このように考えてくると、中国、韓国とは、競争するべきところは正々堂々競争し、また我が国として主張すべきはしっかりと主張する。その上で、FTAの締結も含めた経済統合、さらには、EUのように将来の通貨統合まで視野に入れた協力関係を築いていくことが大事だと思います。機は熱してきています。また、安全保障面でも、北朝鮮への対応も含めて、アジアを平和な地域とすべく、しっかりと対話を積み重ねていくことが大事だと思います。


4. そして、例えばスポーツの面でも、日本のプロ野球界で1リーグ制がいいとか悪いとか矮小な議論が進んでいますが、中国、韓国、そして台湾のチームなども含めたアジアリーグなども考えたら面白いのではないしょうか。今回のアテネオリンピックを見ていて、確かにオリンピックは「ナショナリズム(民族主義)」をかきたてますが、一方で「グローバリズム」の精神も醸成しているように思えます。アジアリーグの設立はきっとアジアの経済・政治統合に役立つにちがいないでしょう。さらに、エネルギーや食糧の共同備蓄、共通のリサイクル制度などを構策していくことも検討すべきだと思います。


5. 余談ですが、今回の日中韓のフォーラム参加者の間で冗談を言い合ったことがあります。誰かが「我々のフォーラムには、日、中、韓の3カ国以外にもう1カ国の参加者がある、誰かわかる?」と質問しました。しばらくみんな沈黙し考えていましたが、やがて皆で理解し笑いあったのです。アメリカなのです。この日・中・韓からの参加者15名はいつも英語で会話しているのです。つまり、「米国を通して」付き合っているのです。こんなに隣国にいながら、「英語を通して」しかコミュニケーションできないということは、何とも不思議な感覚です。もちろん日本にとって米国は大事な同盟国でありますが、アジア地域の発展と平和を考えるとき、アジアの国々との直接の信頼関係もしっかりと構築していかねばならない、と改めて強く感じた次第です。これからも、国際的な視野を広げつつ、日本の将来をしっかりと見据えながら、アジアの平和と発展に全力でがんばってまいります。
(9月中旬には、なつかしい留学の地、米国ワシントンD・Cで米国政府関係者と世界経済やアジアの安全保障について、議論を重ねてきます。)


衆議院議員 西村やすとし