とっておきの1枚

2008年5月17日
ニッシ-の春のおすすめ読書 その⑥

「Every Breath(エヴリブレス)」(TOKYO FM出版:瀬名 秀明著)
奇才・瀬名秀明氏の最新作。あのベストセラー「パラサイト・イブ」で一世を風靡した「サイエンス小説」の旗手が贈る、未来小説である。先般ご紹介した未来IT小説「エクサバイト」(4月11日・今日の一枚参照)にも通じるものがある。
現在でも「セカンドライフ」など、ネット上での仮想生活が生まれているが、本書では、ネット上で自分の分身が行動し、現実の人間のネット上での活動(検索行動やデジタルカメラでの写真記録、ブログなどなど)から、本人の思考・行動パターンと「共鳴」し、仮想空間で本人と同じような行動をしていくのである。そして、仮に本人が死んだとしても、ネット空間で「分身」は生き続けることとなる。ここまでくると、「生命」とは何か、との疑問にぶつかり、「人工生命」の誕生へとつながるのである。金融工学と生命工学が融合していく。「エクサバイト」に比べ、やや思想的、哲学的な内容を含むが、一人の女性の生き方を追い、ネット技術や生命科学の技術の進歩を見通しながら、人生とは何か? 生命とは? と問い続けていく。
ネット社会と「生きる」意味を考えさせられる未来小説である。遅かれ早かれこんな日が来るかもしれない。