とっておきの1枚

2009年6月4日
春のお薦め読書(その⑥)

「時が滲む朝」(楊逸著:文藝春秋刊)
1.昨年度芥川賞受賞作品である。中国人作家楊逸氏が受賞したことについて、大変な反響があった。確かに文章は素朴な感じがするが、天安門事件をはじめとする民主化運動に走る純粋な若者の姿がよく描かれている。

2.今日、平成21年6月4日は、奇しくも、その天安門事件から20周年。中国は、国際社会では一定の責任ある役割を果たすべく変わりつつあると、率直に言って感じるが、しかし、改革派指導者であった故・胡耀邦元総書記や当時の学生の主張に理解を示した故・趙紫陽元総書記の業績について再評価が行われることは想定し得ず、民主化に向けた取り組みも十分ではないとの指摘もある。

3.一方で、中国政府は、今年4月に「国家人権行動計画2009~2010年」を初めて発表し、人権に対する取り組みや目標につき発信を行っている。内外の人権に対する視線を意識した行動の一環と考えられるが、昨年の北京オリンピックや2010年の上海万博などの国際的大イベントを通じて、世界の人々が数多く、中国を訪問することは、中国にとって大いに刺激になっていることと思う。昨年5月の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明における「国際社会が共に認める基本的価値の一層の理解と追及のために緊密に協力する」旨の日中間の合意を今こそ思い出したい。